かぜの症状・診断・治療
風邪の原因の多くはウイルスによる感染
風邪(感冒)という言葉は医学用語にはなく、広く使われる一般用語という扱いになります。
「風邪症候群」というのが適切で、その原因はさまざまになります。
風邪の原因はウイルス感染が90%、残りの10%は細菌によるものです。
風邪のウイルスは200種類以上とされており、どのウイルスに感染したかを特定するのは難しく、毎年変異します。
なかでも中心となるウイルスは下記の通りです。
- ライノウイルス
- エンテロウイルス
- エコーウイルス
- コクサッキーウイルス
- アデノウイルス
- パラインフルエンザウイルス
ウイルスですから抗生物質は効果がなく、免疫でやっつけるしかありません。
インフルエンザは感染力の強さと過去のスペイン風邪などの脅威から特別視され、増殖をおさえる抗インフルエンザ薬が開発されています。
コロナも重症化リスクなどが通常の「かぜ」とは明らかに異質のため、コロナ感染症として社会問題となっています。
風邪の症状と他の感染症との見分け方
まずは、それぞれ特徴に違いがあるので、下記の表をご覧ください。
コロナ感染症は、潜伏期間の長さと感染力の強さが大きな脅威となっています。
潜伏期間が長いために感染に気付かずに行動することで、周囲へと感染を広げてしまいます。
風邪とインフルエンザと新型コロナウイルスの症状の違いは?
インフルエンザやコロナウイルスといった感染症を、症状から見分けるのは非常に困難です。
コロナウイルス感染症では、味覚異常や嗅覚異常が特徴的といわれていました。
デルタ株からオミクロン株が中心になるにつれ、味覚・嗅覚異常は少なくなり、かわりに咽頭痛が増えています。
また通常の風邪に比べると、インフルエンザも新型コロナウイルスも高熱になりやすい特徴があります。
風邪の検査方法
これまでは、状態が安定しているかぜ症状の治療方針は、以下の3つの原因から決められていました。
- 細菌性
- インフルエンザ
- その他のウイルス
現在はこれに加えて、新型コロナウイルスが感染管理の観点で重要になっています。
まずは以下を確認していきます。
- バイタルサイン
- 問診
- 身体所見
- 全身状態
現状では、流行しているウイルス感染症および疑われる感染症検査を行っていくことが一般的です。
- 新型コロナウイルス(抗原・PCR)
- インフルエンザ(抗原)
- 溶連菌(抗原)
そして必要に応じて、以下の検査を行っていきます。
- 採血
- 胸部レントゲン
- 尿中抗原検査
風邪で血液検査をする理由は?
新型コロナをはじめとしたウイルス感染が否定的な場合は、採血をして好中球優位の感染があると、細菌による感染であることが分かります。
その場合は感染場所(フォーカス)を考えながら抗生物質を使っていく必要があるので、血液検査が必要となります。
また血液検査をすることで、炎症の度合いを確認することができます。
- CRP(C-反応性蛋白):血清中のタンパク質が炎症や組織細胞の破壊が起こると増加する値
- 白血球:細菌と戦うための血液細胞
あくまで目安ではありますが、CRPが10をこえると入院も考慮することが多いです。
風邪の治療方法は?
まずは原因を突き止め、細菌が原因であれば抗生物質を処方します。
風邪の症状は、ウイルスや細菌に対して体の免疫が戦っている時の反応なので、基本はゆっくり休んでいれば治る病気です。
そのため、ウイルスが原因の風邪の治療はつらい症状を緩和させるための対症療法が中心となります。
インフルエンザは治療薬がありますが、発熱が1日早く収束する程度に症状が軽くなります。
コロナなどは重症化して肺炎などに移行することが多いため、重症化リスクのある方は慎重な経過観察が必要となり、明らかな重症化リスクがある場合のみバキロビッドやラゲブリオなどが考慮されます。
風邪の予防法は?
風邪の感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
多くの人が触った電車のつり革やドアノブを触った手には細菌やウイルスがついています。また、粘膜にウイルスが付着するのを防がなくてはなりません。
このため感染予防には、手洗いをしっかり行う基本が最も重要で、標準予防策(スタンダード・プリコーション)の要です。
他にも、栄養バランスのいい食事と充分な睡眠といった規則正しい生活リズムは、免疫力をアップしてくれます。
乾燥する季節は鼻やのどの粘膜も乾燥し、ウイルスなどがつきやすくなるので、40%以上を保つように湿度の湿度の管理も行うとよいでしょう。
風邪の症状と似ている怖い病気
「風邪がなかなか治らない」「いつもの風邪より辛いかも・・・」と不安になったことはありませんか?もしかしたら、風邪に似た症状の怖い病気かもしれません。
またコロナ感染症に限らず、免疫が弱い方などでは重症化して肺炎になることもあります。
髄膜炎
髄膜炎は脳を覆っている髄液にウイルスや細菌が感染して起こる病気です。
髄液はほぼ無菌状態なので、感染すれば急激に悪化します。
- 頭痛
- 発熱
- 項部硬直(首が固くなる)
髄膜炎は上記の症状がすべて、必ず出現するとは限りません。
3つ揃うのは約3割と言われており、発見が遅れると死に至る病気です。
副鼻腔炎
副鼻腔炎は風邪などのウイルスや細菌により、鼻腔に炎症が起こります。
副鼻腔は鼻腔と繋がっているので、副鼻腔にも炎症がおよび、膿が溜まるという病気です。
副鼻腔に炎症があれば、打診することで痛みを発症することもあります。
炎症が脳に移行すると非常に危険です。
咽頭膿瘍
咽頭膿瘍はのどの奥の部分(咽後間隙・いんごかんげき)に、膿が溜まる病気で、細菌が原因となります。
のどの痛みや発熱といった症状が現れ、悪化すれば食事ものどを通らなくなり、切開しないと治りません。
視診で膿がないかを確認しますが、確認が難しいため、首のX線検査またはCT検査を行うこともあります。
喉頭蓋炎
喉頭蓋炎はのどの奥にある咽頭蓋が細菌に感染し、炎症が起こる病気です。
咽頭蓋は、食べ物が気管支にいかないようにフタをする役割があります。
炎症して腫大すると、何も食べていなくても気道を塞いでしまい、非常に危険です。
「食べ物が食べづらい」「痛みでつばが飲み込めない」「のどの激しい痛み」があれば喉頭蓋炎の可能性を考える必要があります。
膿胸
膿胸とは胸膜に細菌感染し、肺と筋肉の間にある胸腔に膿が溜まる病気です。
咳と痰が長く続き、発熱といった症状があり、悪化すると息苦しさと胸の痛みが出てきます。
膿は抗生物質が効かないため、取り除かなければなりません。
早期であれば管(ドレーン)を側胸部から刺して膿を出すこともできますが、時間が経過するとともに膿が固まってしまいます。
場合により、手術で固まった膿を除去しなければならないので、早期発見が望ましいでしょう。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年11月5日
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