フェインジェクト(一般名:カルボキシマルトース第二鉄)の効果と副作用

フェインジェクトは、「カルボキシマルトース」と「第二鉄」の複合体を形成している注射鉄剤です。

鉄毒性にならないよう製剤的工夫がされているため、一度に高用量の鉄を投与できます。

また、一週間に一度の投与で治療できるため、患者さんの負担を減らせる利点があります。

今回は、フェインジェクトの効果や特徴、副作用について解説します。

フェインジェクトとは?

注射鉄剤の投与は、血液内に鉄が単独で存在してしまう「遊離鉄」が課題とされていました。

血中に遊離鉄が増えると鉄関連毒性につながるため、一定の量を超えないよう注意しながら投与する必要があります。

そんな中で登場したフェインジェクトは、第二鉄とカルボキシマルトースが複合体となっている注射薬です。

フェインジェクトは注射された後も複合体の形を維持し続けるため、血中の過度な遊離鉄上昇を防ぐことができます。

一度に高用量の鉄投与が可能な上に、長い時間をかけて鉄吸収されるため、週に1回の投与で済む薬剤です。

フェインジェクトの適応

フェインジェクト(一般名:カルボキシマルトース第二鉄)の適応として、以下が認められています。

  • 鉄欠乏性貧血

フェインジェクトの投与は、経口鉄剤の内服が困難な状況のみです。

「強すぎる副作用で経口投与ができない場合」「出血が原因で鉄損失が多く経口鉄剤では間に合わない場合」などが挙げられます。

フェインジェクトの効果

フェインジェクトは静脈内に投与された後、カルボキシマルトースと第二鉄の複合体の状態で、脾臓や肝臓のマクロファージに取り込まれます。

マクロファージに取り込まれた後、エンドソーム内で複合体が分解され、鉄のみの状態となります。

その後、マクロファージから鉄が血液内に放出され、鉄の運び屋であるトランスフェリンと結合し体内を循環します。

やがて鉄は血液細胞を作る骨髄に取り込まれ、ヘモグロビン合成に利用されます。

鉄欠乏性貧血はヘモグロビンが不足している状態を現しますが、フェインジェクトの投与により改善方向へと向かいます。

フェインジェクトの用法

フェインジェクト(一般名:カルボキシマルトース第二鉄)の用法は、以下の通りです。

  • 投与量 :鉄として500㎎ / 回
  • 投与間隔:1週間に1回投与
  • 投与方法:5分以上かけて緩徐に静注射、もしくは6分以上かけて点滴静注
  • 上限量 :鉄として1500㎎(週1回の投与を最高3回まで)

※体重・血中Hb値により上限量は異なる

これまで、注射による鉄欠乏性貧血の治療には、週に2~3回の通院が必要でした。フェインジェクトは週に1回の投与で済むため、患者さん自身の通院頻度も減らすことができます。

フェインジェクトの副作用

フェインジェクトによる副作用で注意すべきものが「血中リン値の低下」です。血中のリンが減少し、長期的な低リン血症が続くと「骨軟化症」につながる恐れがあります。

リンの減少はフェインジェクトの投与を中止すると改善されますが、血液検査の推移により必要と判断される場合はリンの補充を行います。

主な副作用と頻度

フェインジェクトの副作用頻度は、以下の通りです。

  • 血中リン減少:20.1%(33/164例)
  • 頭痛  :4.3%(7/164例)
  • γ-グルタミルトランスフェ ラーゼ増加 :2.4%(4/164例)
  • 肝機能検査異常:2.4%(4/164例)
  • 発熱  :1.8%(3/164例)
  • 上腹部通:1.2%(2/164例)
  • 悪心  :1.2%(2/164例)
  • 下痢  :0.6%(1/164例)

参考:承認時までの国内第Ⅰb相試験、国内第Ⅲ相試験(検証的試験・一般臨床試験)の集計

妊娠

フェインジェクトは「妊娠・妊娠の可能性がある女性に対しては、治療の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ投与」とされています。

非臨床試験(ラット・ウサギ)において、母体の鉄過剰によるものと考えられる胎児奇形が報告されていました。ラットに関しては、胎盤の通過性も報告されています。

授乳

フェインジェクト投与中の授乳は「治療上・母乳栄養それぞれの有益性を考慮し、授乳の継続・中止を検討すること」とされています。

フェインジェクトの乳汁中移行について、国内の臨床試験は実施されていませんが、海外の臨床試験では母乳中の鉄上昇が認められています。

フェインジェクトの薬価

フェインジェクトの薬価は以下の通りです。※2023年4月現在

  • 先発品(フェインジェクト静注500㎎):5969.0円
  • 後発品:未発売

まとめ

  • フェインジェクトは鉄欠乏性貧血に使用される注射鉄剤です。
  • カルボキシマルトースと第二鉄が複合体を形成しており、遊離鉄による鉄毒性が起きないよう工夫されています。
  • フェインジェクトは週に1回の投与で効果を発揮します。
  • フェインジェクトの副作用で最も頻度が高いのが「血中リン減少」です。
  • フェインジェクト静注の薬価は5969.0円です。

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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年9月18日

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