アレルギー性紫斑病の症状・診断・治療
アレルギー性紫斑病とは?
原因不明のアレルギー反応によって全身の毛細血管で炎症が起こり、血管が弱くなってしまうことで紫斑が生じる病気です。
アナフィラクトイド紫斑病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、血管性紫斑病、IgA血管炎などと呼ばれることもあります。
血管炎の中では発症率が高く、年間で10万人に10人~20人くらいの割合で発症します。そのほとんどが3~10歳くらいまでの小児で、男児に多いです。
上気道炎(とくに溶連菌)や胃腸炎などの何らかの感染症の後に1~3週間ほどして起こることが多く、全身の紫斑をはじめ、関節炎や腎炎、消化器症状などが認められます。
アレルギー性紫斑病の症状
この紫斑病では
- 紫斑
- 腹痛や吐き気など腹部症状
- 関節痛
- 部分的なむくみ
- 腎炎
などの症状があります。
これ以外に稀に現れる症状として、意識障害、脳出血、頭痛、けいれん、肺出血などがあります。
紫斑
紫斑は、わずかに盛り上がった赤紫色~青紫色の斑点が、足などで左右対称に複数現れます。
紫と言っても赤っぽい色をしていることが多いため、アザというより何かの発疹のようにも見えます。多くの場合かゆみもともないます。
紫斑が現れる場所は足のスネや甲が多いですが、腕や顔、胸や背中にできることもあります。ひどくなると紫斑の部分で水ぶくれをおこしたり、ただれたりしていることもあります。
腹部症状
約半数の患者さんでは、お腹に何らかの症状がおこります。
腸管の血管が弱くなって壁むくみをおこし、腸重積や腸閉塞を合併することもあるため、ときに激痛をともないます。腹痛や血便、男の子では陰嚢が腫れたり傷んだりすることもあります。
痛みは持続してくり返し、嘔吐がともなうことがあります。痛みの激しさから盲腸(虫垂炎)と間違われることもあります。
関節痛
60%~70%の患者さんでは関節痛をともないます。足や手などで左右両方に現れることが多く、ひどくなると歩けないほど痛むこともあります。
むくみ(浮腫)
足首やふくらはぎのむくみ、頭部や顔のむくみ、背中のむくみなど部分的なむくみがでることもあります。
20%程度の患者さんにみられ、一番多いのは足首やふくらはぎのむくみです。
腎炎
腎炎は30~50%の患者さんにみられる合併症で、紫斑性腎炎と呼ばれます。
発症後3か月以内におこることが多く、血尿などが確認されます。中には1年近くたってからおこることもあるため、定期的な腎臓の検査や経過観察が必要になります。
紫斑性腎炎は程度によって『小児慢性特定疾患』として扱われ、医療費助成の対象になります。
アレルギー性紫斑病の原因
原因についてくわしいことはわかっていませんが、ウイルスや細菌の感染が発症のきっかけとなり、免疫物質の1つであるIgA(免疫グロブリンA)が関連していると考えられています。
発症した患者さんの約50%は、その前に扁桃炎などの上気道炎や、副鼻腔炎(蓄膿症)などをおこしており、それらの原因となるマイコプラズマ、溶連菌、アデノウイルス、パルボウイルスB19などのウイルスや細菌が原因ではないかと研究が行われています。
とくにA群β溶血性連鎖球菌(GAS)感染症(溶連菌感染症)に続いて発症するケースがよくみられます。
薬剤や食べ物のアレルギーとの関連が指摘されることもあります。
それら感染症やアレルギー性のある薬剤や食べ物などの影響により、体内で異常な免疫反応がおこってIgA抗体産生が亢進してIgA免疫複合体が形成され、その複合体が血管壁に付着することで過度な炎症がおき、血管に障害が及ぶのではないかと推測されています。
アレルギー性紫斑病の検査と診断
紫斑が現れる病気は他にも多くあるため、検査を行って病気の判別を行います。紫斑が目立たず強い腹痛が先におこったときは、虫垂炎などと誤解されやすいので注意が必要です。
検査は、血液検査、尿検査、腹部エコー(超音波)検査、細菌検査などがあります。
血液検査
採血による一般的な血液検査では、おおむね正常な状態です。腎炎があるときは腎機能に異常がみられます。
血小板の減少、血小板機能の異常、貧血、白血球の極端な増加などが見られたときは、血液系の病気が疑われます。
詳細な検査をすると、毛細血管抵抗試験が陽性、凝固第XIII因子の活性低下などが確認されることがあります。
また、A群β溶血性連鎖球菌感染症後の発症では、抗ストレプトリシンO(ASLO)抗体と抗ストレプトキナーゼ(ASK)抗体の上昇が認められます。
尿検査
腎炎が合併しているときは、血尿やタンパク尿が認められることがあります。
腹部エコー(超音波)検査
とくに強い腹痛が症状としてあるときは、他の病気がないかを腹部エコーで確認します。間違いやすいのは虫垂炎(盲腸炎)ですが、それもエコーで確かめることができます。
また、アレルギー性紫斑病には腸管のむくみ、腸重積、腸閉塞などが合併することもあるため、その確認も行います。
細菌検査
この病気ではA群β溶血性連鎖球菌(GAS)の関連が深いため、菌が体内にいないかどうかを確かめます。
もしも保菌者だった場合は、ペニシリン系の抗生物質で除菌を試みる必要があります。
アレルギー性紫斑病の治療法
症状が紫斑のみで軽症の場合は様子をみます。軽症のときは自然に治癒することがあります。
急性期は激しく動くと紫斑が悪化する傾向があるため、可能な範囲で安静が必要になります。
関節痛・腹痛・腎炎などがあって支障をきたすときは治療を行いますが、根本的な治療法は今のところ確立されておらず、症状を緩和する対症療法が中心になります。
通常予後は良好で、数か月間は症状がくり返しますがじきに治癒するケースが多くみられます。まれに数年たってからぶり返したり、腎機能の低下がみられることがあります。
対症療法や合併症治療
一般的な関節痛へはアセトアミノフェンなどの炎症・痛み止めの薬を使うことが多く、関節や腹部の炎症が重症になると、抗炎症作用の強いステロイドによる治療を行う場合もあります。
嘔吐や腹痛の症状が重く食事が摂れないときは点滴をし、腸に潰瘍があれば抗潰瘍薬を使うこともあります。
一部の患者さんでは、血液の凝固に関係する物質の低下がみられることがあるため、その場合は補充療法が検討されることもあります。
重症のケースでは、免疫抑制剤や抗がん剤が有効とされる報告もあります。
紫斑病性腎炎が合併したときは専用の薬などで治療を行いますが、5~10%ほどは慢性腎炎に移行してしまいます。
治療が長期に続くときは『小児慢性特定疾患』として医療費の助成を受けることができます。助成については要件や手続きが必要ですので、主治医と相談してください。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年9月30日
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