【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、内科外来の特徴と流れ をお読みください。

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)の効果と副作用

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)は、鉄欠乏性貧血の治療薬です。

鉄剤の中でも食事の影響を受けにくいため、幅広い患者さんに使われています。

今回はフェロミアの効果や副作用について詳しく解説していきます。

フェロミアとは?

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)は、鉄の欠乏により起こる貧血に対して使われる鉄剤です。

一般的に鉄の吸収は胃内がどれくらいのpHかに影響されやすく、胃液が十分に分泌されず塩基性に傾くと吸収されにくくなります。

一方でフェロミアは、塩基性に傾いた状態でも体内に吸収される形を保つ薬剤です。

胃内pHに関係なく吸収されるため、食事などの影響も受けにくく高齢の方や胃を切除した方にも使いやすい薬剤となっています。

フェロミアの適応

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)の適応として、以下が認められています。

  • 鉄欠乏性貧血

フェロミアの効果

フェロミアは、鉄として体内に吸収され、鉄不足による貧血を改善する薬です。

体内に入ったフェロミアは、まず胃の中で錠剤の形が崩れ、小腸から鉄として血液中に吸収されます。

小腸から鉄として吸収された後は、「血漿トランスフェリン」と呼ばれる血液中の鉄の運び屋と結合し、血液細胞を作る「骨髄」まで運ばれます。

その後、骨髄において赤血球の子供である「赤芽球」に取り込まれ、体内の酸素運搬に関わる「ヘモグロビン」が合成されます。

ヘモグロビンの合成に関わることで、鉄欠乏性貧血を改善する効果を示します。

フェロミアの用法

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)の用法は、以下の通りです。

鉄として1日100~200mg(錠剤の場合:2~4錠、顆粒の場合:1.2~2.4g)を1~2回に分けて食後に経口投与

フェロミアを内服する際は、必ず「水・ぬるま湯」で内服をしましょう。

フェロミアは、緑茶・コーヒーといったタンニン酸を含む飲み物と一緒に内服した場合、吸収率が1/2~2/3まで低下したとの報告があります。

飲み物によるフェロミアの吸収率低下を避けるためにも、「水・ぬるま湯」での内服を心がけましょう。

フェロミアの副作用

フェロミアによる副作用は「消化管障害」が最も高い頻度で報告されています。その中でも、フェロミアの内服で特に見られる症状が「吐き気」です。

吐き気を予防するためにも、フェロミアの空腹時内服は避け、食後に多めの水と一緒に内服をしましょう。

また、フェロミアの内服では「黒色便」が見られることがあります。便が黒くなるのは、体内に吸収されなかった鉄が便と一緒に出ているためです。

フェロミア内服による黒色便は、大きな問題はありませんのでご安心ください。

主な副作用と頻度

フェロミアの副作用頻度は、以下の通りです。

  • 嘔気・悪心:3.87%(230/5939例)
  • 嘔 吐 :1.61%(96/5939例)
  • 下痢・軟便:1.02%(61/5939例)
  • 便 秘 :0.70%(42/5939例)
  • 食欲不振:1.02%(61/5939例)
  • 胃部不快感:1.46%(87/5939例)
  • 胃 痛 :0.45%(27/5939例)
  • 発 疹 :0.15%(9/5939例)
  • AST上昇:0.16%(10/5939例)
  • ALT上昇:0.21%(13/5939例)

参考:承認時の臨床試験・再審査期間中に実施した使用成績調査・パイロットスタディの結果を集計

妊娠

フェロミア錠は、妊娠中の鉄欠乏性貧血にも使われる治療薬です。妊娠中の鉄欠乏性貧血は、胎児の低体重や早産などの原因となるとの報告もなされています。

そのため、妊娠中の採血検査でヘモグロビン値低下が見られた場合は、フェロミア錠のような鉄剤が使われます。

授乳

フェロミアは、授乳中の女性の鉄欠乏性貧血にも使われます。

授乳中の女性がフェロミアを内服すると、鉄として吸収された後にトランスフェリン鉄となり、最終的には乳汁中のラクトフェリンとなります。

ラクトフェリンは母乳中の栄養素として重要で、赤ちゃんの感染予防にも関わるものです。

特に出産直後の女性で鉄欠乏性貧血が見られやすいとの報告もあり、授乳中にもフェロミアのような鉄剤が処方されることがあります。

フェロミアの薬価

フェロミアの薬価は以下の通りです。※2023年4月現在

  • 先発品(フェロミア):50㎎錠・7.20円/錠、8.3%顆粒・11.40円/g
  • 後発品(クエン酸第一鉄ナトリウム):50㎎錠・5.70円/錠、8.3%顆粒・6.50円/g

まとめ

  • フェロミアは鉄欠乏性貧血に使われる鉄剤です。
  • 胃内pHに左右されず吸収されるため、食事などの影響を受けにくいとされています。
  • フェロミアは、妊娠中や授乳中の鉄欠乏性貧血にも使われます。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
上野御徒町こころみクリニックでは、血液患者さんの治療と社会生活の両立を目指し、大学病院と夜間連携診療を行っています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP (株)こころみらいHP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

監修医師紹介

山口 博樹

日本医科大学血液内科 大学院教授/上野御徒町こころみクリニック顧問

日本内科学会/日本血液学会(評議員)/日本造血・免疫細胞療法学会(評議員)

総合内科専門医/総合内科指導医/日本内科学会認定内科医/血液専門医/血液指導医/がん治療認定医/日本造血・免疫細胞療法学会認定医/骨髄移植推進財団ドナー調整医師

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆医師紹介

渡邊 直紀

順天堂大学医学部内科学血液学講座 准教授

日本内科学会/日本血液学会

日本内科学会認定内科医・指導医/日本血液学会認定血液専門医・指導医/日本がん治療認定医機構 がん治療認定医/ICLSインストラクター/日本内科学会総合内科専門医/JMECCインストラクター

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年7月7日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

【販売中止】フェルムカプセル(一般名:フマル酸第一鉄カプセル)の効果と副作用

フェルムカプセル(一般名:フマル酸第一鉄カプセル)は、鉄欠乏性貧血に処方されるカプセル剤です。 徐放性の薬剤であり、1日の内服回数を少なくすることで服用の負担を軽減できます。 今回は、フェルムカプセルの効果や副作用につい… 続きを読む 【販売中止】フェルムカプセル(一般名:フマル酸第一鉄カプセル)の効果と副作用

投稿日:

腎性貧血の症状・診断・治療

腎性貧血とは 腎性貧血は腎臓が原因で起こる貧血で、主に腎機能低下に伴って生じる貧血と言えます。 腎臓と言えば、「体内の老廃物を濾過して、おしっこをつくるところ」というイメージがあるかもしれませんが、腎臓にはホルモンを分泌… 続きを読む 腎性貧血の症状・診断・治療

投稿日:

タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の効果と副作用

タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)は、特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の治療に使われる経口血小板破壊抑制薬です。 2023年4月に… 続きを読む タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の効果と副作用

投稿日:

人気記事

紫斑病の症状・診断・治療

紫斑病とは? 紫斑病とは、止血に重要な働きをしている血小板が減少してしまうことなどで、血が止まりにくくなっているときに起こります。 その原因は様々で、血小板の機能に異常がある場合、凝固因子といわれる止血に必要なタンパクが… 続きを読む 紫斑病の症状・診断・治療

投稿日:

アレルギー性紫斑病の症状・診断・治療

アレルギー性紫斑病とは? 原因不明のアレルギー反応によって全身の毛細血管で炎症が起こり、血管が弱くなってしまうことで紫斑が生じる病気です。 アナフィラクトイド紫斑病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、血管性紫斑病、IgA血… 続きを読む アレルギー性紫斑病の症状・診断・治療

投稿日:

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)の効果と副作用

フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)は、鉄欠乏性貧血の治療薬です。 鉄剤の中でも食事の影響を受けにくいため、幅広い患者さんに使われています。 今回はフェロミアの効果や副作用について詳しく解説していきます。 フェ… 続きを読む フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)の効果と副作用

投稿日:

こころみクリニック 上野御徒町 / 内科・血液内科・糖尿病内科
こころみクリニック 上野御徒町
内科・血液内科・糖尿病内科
アクセス・時間はこちら
診療受付時間
8:50~11:50 - - - - - -
9:30~12:30 - -
13:30~17:00 - - - -
14:00~17:00 - - - -
18:00~21:00 - -

●:血液内科・総合内科・発熱対応  ★:糖尿病内分泌内科・総合内科・発熱対応
■:消化器内科・総合内科・発熱対応  ※最終受付時間は各診療終了時間15分前

元住吉駅前こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-22-1
元住吉プラザビル 2階/3階

東急東横線・目黒線元住吉駅西口より
徒歩1分

044-789-8881

  • 内科
  • 小児科
  • 耳鼻咽喉科
  • 婦人科
  • 発熱外来

WEBサイトへ

元住吉こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-22-1
元住吉プラザビル5階

東急東横線・目黒線元住吉駅西口より
徒歩1分

044-789-8881

  • 心療内科

WEBサイトへ

武蔵小杉こころみクリニック

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-1501-1
セントア武蔵小杉A棟203

JR線・東急線 武蔵小杉駅より徒歩2分

044-299-7099

  • 心療内科

WEBサイトへ

田町三田こころみクリニック

〒108-0073
東京都港区三田芝浦3-13-1
矢島ビル501

JR田町駅 徒歩3分、都営三田駅 徒歩5分

03-6435-1553

  • 内科
  • 心療内科

WEBサイトへ

上野御徒町こころみクリニック

〒110-0005
東京都台東区上野6-16-5
正三ビル201

上野駅から徒歩2分、御徒町駅から徒歩4分

03-5812-4698

  • 内科

WEBサイトへ

東京横浜TMSクリニック
みなと東京院

〒108-0073
東京都港区芝浦3-13-1
矢島ビル502

田町駅 徒歩3分、都営三田駅 徒歩5分

03-6381-7515

  • TMS

WEBサイトへ

武蔵小杉こころみクリニック
神奈川TMSルーム

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-1501-1
セントア武蔵小杉A棟203

JR線・東急線 武蔵小杉駅より徒歩2分

044-322-9381

  • TMS

WEBサイトへ

田町三田こころみクリニック
八丈島巡回診療所

〒100-1511
東京都八丈島八丈町三根
306-11

羽田空港から飛行機で1時間

04996-9-5535

  • 内科
  • 訪問

WEBサイトへ

こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-28-5
メディカルプラザD元住吉 3階

東急東横線・目黒線 元住吉駅から徒歩3分

044-948-8572

  • 美容

WEBサイトへ

こころみベース

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-28-5
メディカルプラザD元住吉 3階

東急東横線・目黒線 元住吉駅から徒歩3分

044-948-8579

  • リワーク
  • 訪問
  • イベント

WEBサイトへ

手塚こころみクリニック
武蔵小杉

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-20-1
光ビル205階

武蔵小杉駅から徒歩4分

044-322-9970

  • 心療内科

WEBサイトへ

飯島こころみクリニック
元住吉

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-33-25
NEXUS Grand Mounthelie 1B

元住吉駅から徒歩2分

044-872-7555

  • 心療内科

WEBサイトへ

ISTこころみクリニック
浜松町大門

〒105-0012
東京都港区芝大門2-1-13
芝大友ビル6階

浜松町駅徒歩7分、大門駅徒歩3分

03-5843-8312

  • 心療内科

WEBサイトへ

恵比寿こどもクリニック

〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-9-13
中健ビル3F

恵比寿駅徒歩5分

03-3442-2525

  • 小児科

WEBサイトへ

各種サービス

Service

Page
Top