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溶連菌感染症の症状・診断・治療
溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症とは、溶連菌に感染することでのどの痛みや発熱、首のリンパが腫れるなどの症状がみられる病気です。
溶連菌にはさまざまな種類がありますが、「A群溶血性連鎖球菌」が原因となるものを、一般的に溶連菌感染症と呼びます。
3~10歳の子供に多くみられる感染症ですが、免疫力が低下していると大人も発症します。
抗生物質の服用をして数日後には回復しますが、心臓や腎臓の合併症を引き起こすことがあるので、感染の疑いがある場合は、医療機関を受診してしっかり抗生物質を飲み切ることが重要です。
溶連菌感染症の流行時期
溶連菌感染症の主な流行時期は冬から春です。
冬の寒い時期は免疫力が低下しやすく、感染が広がりやすいので、感染対策をしっかり行う必要があります。
感染経路は飛沫感染と接触感染となるので、手洗いやうがいなどを心がけることが大切です。
溶連菌感染症の症状
溶連菌感染症は3~10歳の子供がかかりやすい感染症ですが、大人も感染する可能性があり、大人と子供では症状が異なります。
共通する主な症状は「のどの痛み」「発熱」「首のリンパ節の腫れ」です。
溶連菌の潜伏期間は2~5日ほどで、この他に嘔吐・下痢・頭痛・倦怠感などを引き起こすこともあります。
溶連菌感染症は風邪の症状と似通っているため、下記のような特徴が該当すれば溶連菌感染症の可能性が高くなります。
- 咳は出ないが、のどは痛む
- 38~39℃の高熱
- 首の前(リンパ節)が腫れ、押すと痛い
- 扁桃腺に白い付着物がある
しかし、症状の現れ方には個人差があり、熱が高くならない人もいます。
溶連菌感染症は市販の風邪薬では効果がないため、感染したら医療機関で抗生物質を処方してもらわないと治すことができません。
治療せずに放置してしまうと合併症を引き起こす恐れがあるので、感染の可能性があれば医療機関を受診しましょう。
子供に出現する症状の特徴
3歳以下の子供は大人と同様に風邪と区別することが難しいですが、3歳以上の子供では、以下のような特徴的な症状が現れることがあります。
- イチゴ舌:舌にイチゴのようなブツブツができる
- 猩紅熱(しょうこうねつ):全身に赤くて小さな発疹が出現し、かゆみや腫れを伴う
- とびひ:水ぶくれが膿に変わり、かゆみのあまり引っ掻くと広がる
- 丹毒(たんどく)・蜂窩織炎(ほうかしきえん):表皮から真皮が炎症を起こし、赤く腫れて押すと痛みを生じる
上記の症状は、大人にはほとんど認められない症状です。
溶連菌感染症の合併症
溶連菌感染症が重症化すると、身体のさまざまな部位に影響をもたらし、合併症を引き起こすこともあります。
溶連菌に感染するとリウマチ熱により、心臓の膜や筋肉に炎症が起きて弁膜症になります。
弁膜症は心臓の働きを悪くしていくので、ひどい場合は手術が必要です。
その他に挙げられる合併症は、腎臓で血液をろ過する役割のある糸球体に、炎症が起こることで引き起こされる急性糸球体腎炎です。
血液やタンパク質がろ過できなくなると尿に排出されてしまい、血尿やむくみの症状が現れます。
急速に進行してしまった場合は糸球体が破壊され、慢性化したり腎不全になることもあります。
劇症型溶血性連鎖球菌感染症
劇症型溶血性連鎖球菌感染症とは、溶連菌により引き起こされる感染症です。
急激に進行して悪化するため、敗血症性ショックや多臓器不全を起こすこともあり、命に危険が及ぶこともあります。
非常に稀な感染症ではありますが、毎年100~200人が感染し、その約30%が死亡しており、死亡率の高い病気です。
感染の疑いがある場合は、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。
溶連菌感染症の検査
溶連菌感染症の検査はとても簡単で、短時間で終了します。
検査方法は、のどの奥の粘液を長い綿棒で採取し、約10分ほどで検査結果がわかります。
しかし、重症化している場合は合併症の有無を確認するため、他の検査も必要です。
感染後の尿検査について
溶連菌感染症を感染した後に尿検査を行う理由は、急性糸球体腎炎を合併していないか確認するためです。
血液中の抗体と溶連菌が腎臓に運ばれて炎症を引き起こすことがあるため、診断から約2週間後に尿検査を行う必要があります。
皮膚感染した場合は2週間以上が経過してから急性糸球体腎炎を発症することもあるので、身体がむくんでいたり、尿の量が減ったり、褐色の尿が出たときは医療機関を受診するようにしてください。
溶連菌感染症の治療
溶連菌感染症は、抗生物質の服用して治療していきます。
とくにペニシリン系の抗生物質(サワシリンなど)が有効です。
抗生物質を服用することで腸内細菌の働きが弱くなってしまうため、下痢などの副作用が出ることがあります。
そういった場合は整腸剤などの処方が可能なので、医師に相談してみてください。
服用から約24時間で溶連菌はほとんど消えてしまいますが、合併症予防のために10日~2週間程度は服用することが必要です。
しかし、市販の風邪薬は効かないので、必ず医療機関で処方箋を出してもらいましょう。
発熱するのは菌に対する免疫反応なので、体力的に問題がなければ解熱剤を使用せず、自然に熱を下げる方が治りが早くなります。
自宅で水分補給をしっかり行いながら、温かくしてゆっくり休みましょう。
溶連菌感染症の予防
現在は溶連菌感染症の予防接種は開発されていないため、予防としては風邪と同じです。
予防法は下記を参考にしてみてください。
溶連菌感染症が流行する寒い時期は、免疫力も下がりやすく、インフルエンザなども流行します。
生活習慣を整えて免疫力を高め、感染対策を行っていきましょう。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年1月7日
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