筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状・診断・治療

慢性疲労症候群とは

慢性疲労症候群とは、十分に休息しても強い疲労感が抜けず、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。

頭痛・動悸・微熱・のどの痛み・記憶力の低下など、様々な症状を伴うことがあります。

うつ病や不安障害などが合併して起こることもあるので、心身ともにケアしていく必要があります。

慢性疲労症候群の原因

慢性疲労症候群の発症については、明確に解明されているわけではありません。

しかし、長年の研究で「ストレス」と「過去のウイルス感染」が影響を及ぼしていることがわかってきています

慢性的なストレスが続き、免疫機能が低下すると、過去に感染したEBウイルスなどが再活性化します。

すると、サイトカインという免疫物質が過剰に生成され、脳の神経にダメージを与えることで、慢性的な疲労感や倦怠感を引き起こしていると考えられています。

慢性疲労症候群の症状と診断基準

2015年に米国医学研究所が公表した一般的な症状には、以下のようなものが明記されています。

  • 筋肉痛
  • 腫れや赤みのない関節痛
  • 新しいタイプあるいは重度の頭痛
  • 首や脇の下のリンパ節の腫れや痛み
  • 頻繁に起こる喉の痛み
  • 寒気や寝汗
  • 視覚障害
  • 光や音に対する過敏性
  • 吐き気
  • 食物・臭気・化学物質・薬物に対する過敏症(アレルギー)

3つの中核症状

慢性疲労症候群の診断は、2015年に米国医学研究所が発表した最新のエビデンスに基づいた診断をしていきます。

公表されている診断基準によると、3つの中核症状すべてに該当し、2つの追加症状の少なくとも1つは満たすものと定義されています。

では、慢性疲労症候群の3つの中核症状からみていきましょう。

  1. 大幅な活動レベルの低下
  2. 仕事や学業など社会生活や日常生活において、発症前より活動レベルが著しく低下した状態が6か月以上続き、以下のような疲労感を伴う。

    ・深い疲労を繰り返す

    ・新しく発症した疲労(生涯続くとは限らない)

    ・継続的、または過度な運動ではない疲労

    ・休息しても緩和されることがない

  3. 労作後倦怠感(PEM)
  4. 発症前は問題とならなかった身体的・精神的・感情的な労作後に症状が悪化する。

    PEMは病気をたびたび再発させ、一部の患者では、光や音に対する感覚過敏がPEMを誘発させる可能性がある。

    症状は通常、活動または曝露から 12〜48 時間後に悪化し、数日または数週間続くこともある。

  5. 睡眠で疲れが取れない
  6. 特別な睡眠の変化がないにも関わらず、一晩中睡眠をとった後でも気分がよくならず、疲れがとれないことがある。

追加症状

慢性疲労症候群の診断基準である、追加症状は以下の通りです。

  1. 認知機能障害
  2. 患者には、思考、記憶、実行機能、情報処理に問題があるだけでなく、注意欠陥や精神運動機能の障害がある。

    いずれも、運動・努力・長時間の直立姿勢・ストレス・時間的プレッシャーによって悪化することもあり、患者が仕事を維持したり、フルタイムで学校に通ったりする能力に深刻な影響を与える可能性がある。

  3. 起立性調節障害
  4. 立位時の心拍数と血圧の客観的な異常によって客観的に測定され、直立姿勢を維持すると症状が悪化する。

    立ちくらみ・失神・疲労の増加・認知力の低下・頭痛・吐き気などの起立性症状は、日常生活での静かな直立姿勢 をとると悪化し、横になると改善する。

    この症状は必ずしも改善されるわけではない。

米国医学研究所委員会は、これらの中度から重度の症状が半分以上の期間を占めていない場合は、慢性疲労症候群でないことを問わねばならないと明記しています。
参考:CDCホームページ

どうしても慢性疲労症候群は、原因がよくわからないときに安易に診断される傾向があります。

疲労度を表すPS基準

疲労の感じ方には個人差があるのでPS(performance status)という基準が設けられています

以下の項目のPS3以上が、慢性疲労症候群の基準となります。

疲労度を表すPS基準を一覧にしました。

慢性疲労症候群は何科を受診すればいい?

慢性疲労症候群の疑いがある場合、まずは内科を受診し、疲労の原因となる病気がないか確認することが必要です。

身体に異常がなければ、心療内科や精神科を受診するとよいでしょう。

慢性疲労症候群の検査

慢性疲労症候群を診断するには、身体や精神の病気ではないことを確認する必要があります。

そのため、以下の検査で身体の病気がないかを調べます。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 便検査
  • 心電図
  • 胸部レントゲン

検査で異常がなければ、メンタルによる病的な疲労感や、ダルさの元になる精神疾患の可能性を除外していきます。

慢性疲労症候群の合併症

慢性疲労症候群には他の病気が合併していることもあり、その多くはストレスの影響が強い病気であると考えられています。

引き起こす可能性のある合併症には、次のような病気があります。

身体の病気

  • 過敏性腸症候群
  • 機能性胃腸症(ディスペプシア)
  • 月経前症候群
  • 片頭痛
  • 顎関節症
  • 線維筋痛症

身体の病気

  • うつ病
  • 全般性不安障害
  • 身体症状症
  • 疼痛性障害

慢性疲労症候群の治療

慢性疲労症候群の原因は少しずつ解明されてはいるものの不明点が多く、根本的な治療法は研究中の段階です。

過去のウイルス感染により、免疫異常をきたすことにより、発症するということが解明されていても、現段階ではこの免疫異常も治療することはできません

そのため、慢性疲労症候群の治療は、症状を和らげるための対症療法しかありません。

治療法が確立されていないため、保険適用外の高額な治療やサプリメントが使用されることもありますが、保険適用内で行える治療法を推奨します。

漢方薬での治療

慢性疲労症候群は、身体に必要なエネルギー(気)や栄養(血)が体の隅々まで回らない気虚と血虚の状態となっているため、それを補うために漢方薬(補剤)を使用します。

消化機能の低下による慢性的な疲労も考慮しながら、個人に合わせて選んでいく必要があります。

しかし、身体に合わない漢方薬は身体の負担になってしまうため、必ず医師に相談してください

  • 補中益気湯:気虚の基本であり、消化機能を丈夫にして気を補う。
  • 四物湯:血を補い、疲労や動悸、虚弱で栄養不良の際に用いる。
  • 加味帰脾湯:不眠や抑うつ気分などが強く、消化不良を認める場合に用いる。
  • 十全大補湯:貧血気味で、消耗が著しいときに気血を補うために用いる。
  • 人参養栄湯:十全大補湯でも不十分な場合に用いる。

ビタミン剤と食事での治療

エネルギーを補う上で、タンパク質・ミネラル、ビタミンといった栄養バランスのとれた食事は必要不可欠です。

とくにビタミンB群やビタミンCには、以下のような作用があるため、不足すると慢性的な疲労の要因となります。

ビタミンB群:脂質や糖のエネルギー代謝に関わり、疲労回復効果や免疫を高める効果がある。
ビタミンC:白血球を活性化し、免疫を高め、ストレスを抑制する作用がある。

基本的には日常の食事で十分接種できていますが、胃腸障害や偏食などが原因でバランスのいい食事が摂れないといった場合は、ビタミン剤を補給することもあります。

筋肉疲労が蓄積している場合は、乳酸の分解をサポートするクエン酸や酢酸を補給します。

鳥の胸肉などに含まれるイミダゾールペプチド(イミダペプチド)に疲労回復効果があるとの報告もあり、自費サプリを使われる方もいらっしゃいますがエビデンスとしては十分ではありません。

抗不安薬や抗うつ剤での治療

慢性疲労症候群には精神症状が認められることもあり、抑うつ状態や不安などに慢性の疲労感が合併している可能性があります

そのため、不安や緊張が強く、自律神経症状がある場合は抗不安薬、抑うつ状態や意欲低下が生じている場合は抗うつ剤を使用していきます。

生活習慣を整える治療

強い疲労感や精神症状が薬の服用で落ち着いてきたら、生活習慣を整えていくことも必要です。

規則正しい生活は、心身のバランスを整えるだけでなく、ストレスへの免疫を向上してくれます。

生活習慣を改善するのは大変なことではありますが、毎朝〇時に起きるといった無理のない具体的な目標を立て、少しずつ改善していきましょう。

カテゴリー:こころみ医学|2022年12月23日