スミフェロン注DSとは?
IFN(インターフェロン)は体内で作られるたんぱく質(生物学的応答調節剤=サイトカイン)で、腫瘍細胞に対する生体の応答力を高めることが知られています。
NK細胞やマクロファージを活性化し、腫瘍細胞に対する細胞障害性を高めます。
スミフェロン注DSは慢性骨髄性白血病やヘアリー細胞白血病に使用するIFN-αで、以前は標準治療薬でしたが、現在はイマチニブやクラドリビンの登場で使用されることが減少しています。
ジェネリック医薬品(後発品)については、2023年現在、発売になっていません。
スミフェロン注DSの適応と効果
スミフェロン注DSの適応と効果は、以下の通りです。
スミフェロン注DSの正式適応
- 腎癌、多発性骨髄腫、ヘアリー細胞白血病
- 慢性骨髄性白血病
- B型慢性活動性肝炎のウイルス血症の改善 ※HBe抗原陽性でかつDNAポリメラーゼ陽性(活動性が高い状態)
- C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善 ※血中C型肝炎ウイルス RNA量が高い場合を除く
- C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善 ※セログループ 1 の血中C型肝炎ウイルスRNA量が高い場合を除く
- 亜急性硬化性全脳炎におけるイノシン プラノベクスとの併用による臨床症状の進展抑制
- ヒト成人T細胞性白血病ウイルスI型脊髄症(HAM)
スミフェロンの効果
スミフェロンによる慢性骨髄性白血病への効果のメカニズムは完全には分かっていません。
少なくともその一部は、スミフェロンが造血幹細胞の分化と増殖を促進するC/EBPβを活性化させ、白血病幹細胞(白血病細胞のもと)を分化させることで枯渇を誘導する、さらには白血病幹細胞を疲弊させることによると考えられています。
【C/EBPβはIFN-αによる慢性骨髄性白血病幹細胞の疲弊に重要なメディエーター】

スミフェロンの効果の分子メカニズムが イマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のメカニズムと異なるため、組み合わせるとより良い治療効果につながる可能性がありますが、慢性骨髄性白血病にはTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)がよく効きますので、現在は妊娠中にTKIからスミフェロンへ切り替えるという使用が主です。
実際にいくつかの臨床試験では、IFN-αとの併用療法が TKIの治療効果を大幅に改善することが示されていますが、そのような使われ方はしていません。
スミフェロンの用法
スミフェロンの血液疾患での用法は、以下のようになっています。
- ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫
1日1回1~2シリンジ(主成分として300万~600万IU)を皮下又は筋肉内に注射
年齢・症状で適宜増減され、または1日おきに注射
実際には、妊娠中のCML(慢性骨髄性白血病)以外では、ほとんど使われていません。
スミフェロン注DSの添付文書
スミフェロン注DSのIF
スミフェロンの副作用
発熱、倦怠感などインフルエンザに似た症状のほか、骨髄抑制や食欲不振、脱毛や下血などの副作用もみられます。
まれに、間質性肺炎や自殺企図(うつ症状)があらわれることがあります。
主な副作用と頻度
スミフェロンの副作用は以下の通りです。
【比較的よく起きる副作用(頻度5%以上)】
- 発熱
- 全身倦怠感
- インフルエンザ様症状
- 頭痛
- 骨髄抑制(顆粒球減少、血小板減少)
- 食欲不振
- 脱毛
- 網膜などの微小循環障害
【稀に起きる副作用(頻度0.1~5%未満)】
- 間質性肺炎
- 抑うつ
- 糖尿病
- 消化管出血(下血・血便)
- 錯乱
- 痙攣
- 幻覚妄想
重大な副作用
スミフェロンの重大な副作用として、以下の3つがあげられます。
それぞれについて、簡潔にご説明していきます。
うつ症状
約0.1~5%未満にみられ、自殺企図の危険を伴うので、投与前後2週間に精神状態を評価します。
食欲がなくなっているときは副作用だけでなくうつ症状の可能性もあり、主治医に報告してください。
間質性肺炎
投与1か月以降に現れます。
労作時呼吸困難や咳嗽、発熱が見られたら、直ちに胸部X線、血清マーカーKL6などの検査を行います。
網膜出血
しばらくしてから認めらることが多く、特に血小板低値、血清中性脂肪高値症例で多いです。
それ以外にも、視力低下、視野が欠ける、目のかすみ、物が歪んで見える、黒い点や線が視野に見える(飛蚊症)などの症状が現れた場合は、主治医に申し出てください。
妊娠と授乳
慢性骨髄性白血病に関しては、他のお薬に比べるとスミフェロンがより安全と考えられていますので、妊娠中にはTKIから切り替えて治療されます。
ですが厳密には、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、安全性が確立はできていません。
妊婦さんを使った証明が困難だからで、現時点では明らかなリスクが認められていないけれども保証はできないということになります。
このため多くのお薬と同様で、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合のみとされています。
また授乳についても、明らかな有害性は認められていないものの、動物実験で母乳移行が認められているので、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して検討する必要があります。