ハイドレア®(ヒドロキシカルバミド)の効果と副作用
ハイドレア(一般名:ヒドロキシカルバミド)は、本態性血小板血症や真性多血症、慢性骨髄性白血病に使われる治療薬です。
代謝性拮抗薬とも呼ばれ、DNA合成を阻害することで作用を発揮します。
異常な増殖をする血液細胞を減らす働きのある、血液の抗がん剤になります。
今回は、ハイドレアの効果や副作用について見ていきましょう。
ハイドレア(ヒドロキシカルバミド)とは?
ハイドレアは代謝拮抗薬のひとつで、血液のがんに使われる治療薬です。
先発品としてハイドレアの商品名で発売されており、一般名(成分名)がヒドロキシカルバミドになります。
化学名やアメリカの医薬品ではヒドロキシウレア・ヒドロキシ尿素と呼ばれますが、これらは全て同じ薬です。
ハイドレアはDNA合成を阻害、特に細胞周期におけるS期でのリボヌクレオチドレダクターゼを阻害するとされています。
この作用により、白血球や赤血球、血小板などの血液細胞を減らす働きをします。
そのため、血液細胞の過度な増殖がみられる骨髄増殖性腫瘍のうち「、「真性多血症」「本態性血小板血症」「慢性骨髄性白血病」の3つの疾患で使われます。
ハイドレアの適応と効果
ハイドレアの適応は以下の通りです。
- 本態性血小板血症
- 真性多血症
- 慢性骨髄性白血病
本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)
本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は、出血した際に血液を固める働きをする血小板が体内で過剰に作られてしまう疾患です。
一過性脳虚血発作や肺塞栓症といった、体内でできた血栓がおこるリスクが上昇し、鼻血などの軽度な出血などが見られます。
血小板数を減少させる目的でハイドレアが使用されますが、同時に副作用として白血球減少、赤血球減少が起こりうるため感染症や貧血には注意が必要です。
真性多血症(polycythemia vera:PV)
真性多血症(polycythemia vera:PV)は、赤血球や白血球、血小板の全ての血球が増加する疾患です。
多くの場合、JAK2遺伝子(ヤヌスキナーゼ2遺伝子)の変異が原因で起こる疾患と言われています。
真性多血症で見られるのは、赤血球の増加による鉄欠乏症、血小板の増加による血栓症などの症状です。
ハイドレアは真性多血症に対する血液細胞の増加に対し、細胞減少療法の第一選択薬として使用されます。
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)
慢性骨髄性白血病は、骨髄内でがん化した白血病細胞が増殖する疾患です。
白血病細胞は未熟な白血球でもあり、体内で増殖すると成熟した白血球と同じ働きができず、倦怠感や発熱などの症状につながります。
慢性骨髄性白血病に対する治療薬は、グリベック(一般名:イマチニブ)などのチロシンキナーゼ阻害薬が選択されることが多いので、ハイドレアが使用されるのはまれです。
ただし、脾腫やリンパ節腫脹の苦痛緩和や腫瘍崩壊症候群による痛風の発生率低下のメリットを求めて、ハイドレアを使用するケースもあります。
ハイドレアの用法・用量
ハイドレアの用法・用量は以下のようになっています。
- 通常時:1日500mg~2,000mgを1~3回に分けて内服
- 寛解後の維持:1日500mg~1,000mgを1~2回に分けて内服
ハイドレアの用法・用量は、血液検査の結果や症状、副作用、年齢、体重などを総合的に判断し決定されます。
主治医に言われたタイミングや量を守り、服用をしてください。
ハイドレアの副作用
ハイドレアで起こりうる副作用で特に注意が必要なのが、骨髄抑制です。
骨髄抑制とは、骨髄が持っている血液細胞をつくる機能が抑えられてしまう状態を指します。
これにより白血球や赤血球、血小板の量が必要以上に少なくなってしまい、感染症や貧血、出血傾向などが見られるようになってしまいます。
血球細胞の低下はハイドレア内服治療の目的でもありますが、過剰に減りすぎてしまうと重篤な副作用につながりかねません。
これらを防ぐためにハイドレア内服中は血液検査を行い、白血球数や赤血球数、血小板数のモニタリングを行います。
ハイドレアの副作用頻度
ハイドレアの副作用頻度は以下のようになっています。
- 貧血:4.37%(79/1806例)
- 赤血球減少:1.72%(31/1806例)
- 白血球減少:4.43%(80/1806例)
- 血小板減少:6.09%(110/1806例)
- 肝臓・胆管系障害:6.53%(118/1806例)
- 脱毛:1.00%(18/1806例)
- 皮疹:0.55%(10/1806例)
- 皮膚潰瘍形成:0.39%(7/1806例)
- 口内炎:0.83%(15/1806例)
- 食欲不振:0.55%(10/1806例)
参考:使用成績調査(平成4年7月3日~平成14年3月21日)
妊娠と授乳
ハイドレアは、妊娠中・授乳中ともに内服ができません。
妊娠中にハイドレアを服用し胎児奇形が見られたとの報告があったこと、動物実験において胎児死亡の報告があったことから妊娠中の内服は禁忌とされています。
男性に対してもハイドレアによる遺伝毒性が認められているため、治療が終了してから1年以上は避妊をするよう推奨されています。
授乳についても乳汁中の移行性が認められているため、ハイドレア内服中は避ける必要があります。
ハイドレアの薬価
ハイドレアの薬価は以下のとおりです。※2022年12月現在
- 先発品:ハイドレアカプセル500mg 212.1円
- 後発品:未発売
まとめ
- ハイドレアは代謝性拮抗薬とも呼ばれ、DNA合成を阻害し作用を発揮します。
- 後発品:未発売
- 骨髄増殖性腫瘍のうち「真性多血症」「本態性血小板血症」「慢性骨髄性白血病」で使われます。
- ハイドレアの副作用で特に注意が必要なのが、骨髄抑制です。
- ハイドレアカプセルの薬価は212.1円です。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年3月1日
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