慢性骨髄施白血病の症状・診断・治療

慢性骨髄性白血病(CML)

慢性骨髄性白血病(CML)

慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myelogenous Leukemia)は、主に白血球系(リンパ球以外)の造血幹細胞に異常が起こり、がん化した血液細胞が無制限に増殖することで発症します。

検査値の異常として最も目立つのは白血球の激しい増加ですが、同時に血小板数の増加や貧血などを認めることもあります。

慢性骨髄性白血病では、造血幹細胞にはある程度の成熟機能があり、白血球ががん化して白血病細胞となっても初期には正常の白血球とほぼ同じ働きをし、進行もゆっくりなので初期の段階では症状があまり目立ちません

健康診断などで白血球数の増加を指摘され、初めて白血病とわかるケースが半数以上を占めます。

一方、病気が進行すると、次第に白血球数の増加による全身の倦怠感、寝汗、食欲低下や体重減少、脾臓(ひぞう)の増大による腹部の張りなどの症状があらわれます。

発症から3~5年は症状がおだやかな慢性期が続きますが、じきに急性骨髄性白血病と同じような病態を見せ始め、正常な赤血球、白血球、血小板が減少して貧血、感染症、出血などの症状が急に進行する『急性転化』という現象をおこすため、注意が必要です。

この白血病は『フィラデルフィア染色体』という正常な人には無い変異染色体がみられるのが特徴で、治療はそこから発生する異常なたんぱく質を抑える分子標的薬の有効性が認められています。

若い人にも発症はしますが数は少なく、40歳代後半から50歳代をピークに中高年層で多く発症しています。

慢性骨髄性白血病(CML)の症状

急性骨髄性白血病(AML)の症状

慢性骨髄性白血病(CML)は急性骨髄性白血病(AML)に比べ、発症から3~5年はあまり症状が目立ちません。

慢性期・移行期・急性期と3つの病期をたどるのが特徴

慢性期の症状

発症から3~5年は、慢性期と呼ばれる比較的おだやかな時期が続きます。

可能性のある自覚症状としては、白血球数の増加により、

  • 脾臓の腫れ
  • お腹の腫れ、肝腫大
  • 体重減少、食欲低下
  • 全身倦怠感
  • 微熱

このような症状が認められます。

  • 貧血症状(疲れやすい、息切れ、動悸など)
  • 出血しやすくなる
  • 感染症にかかりやすく治りづらい(高熱や炎症が続くなど)

急性白血病に認められるような症状があっても、急性骨髄性白血病ほどにはなりません。

自覚症状がないまま白血球の異常な増加を指摘され、そこから精査して診断を受ける患者さんも少なくありません。

病気が進行すると、次第に白血球数や血小板数の増加による症状や、正常血球減少による症状が目立ち始めます。

移行期・急性期の症状

3~5年の慢性期の後、急性骨髄性白血病とよく似た病態をみせるようになります。

この時期になると、急性白血病と同じように未熟な状態の白血病細胞が増殖するようになり、成熟した血球が減少するため様々な症状をおこすようになります。

また、増加した白血病細胞が全身へ広がり、他の組織に症状がみられることもあります。

具体的には、

  • 脾臓の腫れが増大する
  • 高熱や炎症が続く(白血球の機能不足で免疫力が低下する)
  • 貧血症状(赤血球の機能不足)
  • 鼻や歯肉から簡単に出血したり、アザができやすくなったりする(血小板の機能不足)
  • 関節痛や骨痛(白血病細胞が全身に巡り他の組織に影響を与える)
  • 激しい頭痛や吐き気(中枢神経への影響)

などがあります。

慢性骨髄性白血病の進行(病期)

慢性骨髄性白血病は、状態によって慢性期、移行期、急性転化期(急性期・芽球期)の3つの病期に分けられます。

慢性期

白血球数と血小板数は増加しているものの、自覚症状をともなわないことが少なくありません。

患者さんが病気に気付くのは他の目的で血液検査を行い、白血球数などの異常を指摘されて精査を受けた結果ということが多い白血病です。約85%の人がこの時期に診断を受けています。

慢性期は3~5年で、この時期に適切な治療を行わなかった場合や、治療を行っても効果が得にくかった場合には、移行期を経て急性転化期へと進行します。

移行期や急性転化期に入ると治療が難しくなってくるため、慢性期を維持することが治療の目的となります。

慢性期においては、骨髄内と血液中の芽球(急性白血病で多くみられる未熟な細胞)の割合は10%未満です。

移行期

慢性期の治療が不十分で3~5年経過すると、病的な白血病細胞の分化能(成熟する能力)が失われ、骨髄や血液中に急性白血病でみられる『芽球』という未熟なままの細胞が増加します。

同時に白血病細胞の増殖能力は高まり、骨髄内で芽球の割合が増え、成熟した血球細胞が減少してしまいます。

その結果、治療による白血球数のコントロールは困難になり、脾臓の腫れが進行したり、正常な血球不足により貧血、出血傾向、高熱などの症状が現れることもあります。

移行期は個人差があり、移行期がほとんどないまま急性転化期に突入する患者さんも

移行期においては、骨髄内や末梢血中の芽球の割合は10%以上20%未満です。

急性転化期

元はある程度の分化能を持っていた白血病細胞の分化能がほぼ失われ、急性骨髄白血病と同じように細胞が非常に未熟なままの状態(芽球)で無限の増殖を始めます。

急性期、芽球期とも呼ばれ、骨髄や血液中では芽球の割合が増大し、成熟した血球細胞が急速に減少していきます。

そのため、赤血球減少による貧血症状、白血球減少による感染症状、血小板減少による出血症状などが急に目立つようになります。

また、白血病細胞が骨や皮膚やリンパ節に腫瘤を形成したり、脳や脊髄などの中枢神経に白血病細胞が広がり、激しい頭痛や吐き気を認めることもあります。

この時期にくると慢性期と同じような治療では効果がなく、強い抗がん剤を使った治療を行います。

それでも効果が不十分なときは、造血幹細胞移植が検討されることもありますが、全身状態や年齢などによって慎重な検討が必要です。

急性転化期においては、骨髄内や末梢血中の芽球の割合は20%以上になります。

慢性骨髄性白血病(CML) の診断基準

慢性骨髄性白血病(CML)の診断では、以下の点を重視して診断します。

  1. フィラデルフィア染色体が確認される
  2. 白血球が著しく増加している
  3. 白血球の中でもとくに好塩基球が増加している
  4. 末梢血に通常では認められない各分化段階の未熟な骨髄球系細胞(骨髄芽球から後骨髄球まで)が出現している

慢性骨髄性白血病(CML)は、著しい白血球の増加を特徴とします。

半数以上の患者さんで10万個/μL以上(基準値の10倍以上)になります。

白血球の中でも、正常なら数の少ない好塩基球が増加していると、慢性骨髄性白血病(CML)の疑いが高くなるとされています。

それ以外は好中球と好酸球が増加しています。多くは血小板の増加もともない、赤血球は減少の傾向があり約20%の患者さんでは明確な貧血がありますが、正常値のこともあります。

しかしながら、確定診断のためには骨髄内の細胞の状態や割合を分析し、細胞にこの白血病に特徴的なフィラデルフィア染色体があるかどうかを調べる必要があります。

増加している好中球は、顕微鏡で観察したときには一見正常に見えますが、好中球アルカリフォスファターゼ(NAP)活性という数値が明らかに低下し、正常白血球とは異なることがわかります。

この判別が、他の白血球増多症との重要な鑑別点となります。

慢性骨髄性白血病の原因

この病気の直接的な原因は、『フィラデルフィア染色体(Ph:Philadelphia chromosome)』という変異遺伝子によるものです。

しかしながら、なぜ突然染色体の一部が入れ替わって変異遺伝子が形成されるのかの原因まではわかっていません。

この染色体変異は生まれ持ったものではなく後天的なもので、それに関わる要因は不明のままです。

フィラデルフィア染色体とは、

フィラデルフィア染色体は、染色体のうちで9番染色体と22番染色体の一部がそれぞれ切断し、入れ替わってしまった結果生じる変異染色体です。

この染色体では本来離れているはずのABL遺伝子とBCR遺伝子が隣り合わせになり(ABL-BCR融合遺伝子)、細胞への情報伝達が通常とは違う働きになってしまいます。

ABL-BCR融合遺伝子上では、細胞の寿命などに関わるチロシンキナーゼという酵素が常時働き

また、遺伝子を不安定にし、細胞の異常を促進させる作用もします。

慢性骨髄性白血病の治療で使用されるイマチニブ(商品名:グリベック)などの薬は、チロシンキナーゼの働きを抑え、白血病細胞が生き続けられないようにする仕組みです。

イマチニブなどはチロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれ、フィラデルフィア遺伝子陽性型の白血病に対しては、高い有効性が認められています。

『フィラデルフィア染色体』の名前は、1960年代にアメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアの研究者によって発見されたことから命名されました。

慢性骨髄性白血病の検査

病気を正しく診断し、病状を正確に知るために、初診時や治療開始前には多くの検査が行われます。

治療開始後も、治療効果や副作用を確かめるために定期的な検査を行います。

主な検査は血液検査、骨髄検査(分子遺伝子学的検査・細胞遺伝学的検査)、画像検査などです。

慢性骨髄性白血病ではとくに、遺伝子学的な検査が欠かせません。

血液検査

①血球・生化学検査

血液検査では、血液中の赤血球・白血球・血小板の数を調べ、白血球の分類も行います。

慢性骨髄性白血病は骨髄系白血球細胞の分化に異常がおこるため、とくに白血球の1種である好中球系細胞の成熟状態を調べます。

慢性骨髄性白血病では、好中球系の細胞が、未熟な段階 (芽球)から成熟した段階までまんべんなく増加することが特徴です。

この状態が確認されたときは慢性骨髄性白血病を疑い、さらに詳しい検査へ進みます。

②生化学検査

血液検査の一般生化学検査では、全身の内臓の状態を調べます。

治療開始後は、初期に高尿酸血症や電解質の異常、治療中に薬の副作用で肝機能異常なども起こる可能性があるため、定期的な血液検査を行います。

③分子遺伝学的検査

採取した血液の遺伝子をPCR法という方法で増幅させ、慢性白血病に特徴的なBCR-ABL融合遺伝子の量を測定します。

この検査は慢性白血病の確定や、治療効果の確認などで重要な検査です。

④細胞遺伝学的検査(染色体検査)

BCR-ABL融合遺伝子を検出するために、染色体検査を行います。

染色体検査にはFISH法という骨髄液を用いて行うものがあります。

FISH法は短期間で結果がわかるため、初診時で確定診断を急ぐ場合や、治療の効果を確かめるときに用いられます。

骨髄検査

通常は骨髄穿刺で骨髄液を抜き、骨髄内の詳細を調べます。骨髄穿刺は、腸骨(骨盤の後ろの骨)に細い注射針を刺して骨髄液を採取します。

骨髄液が採取できないときは、骨髄生検で骨髄の組織の一部を取り出し検査します。

①骨髄像検査

取り出した骨髄液や骨髄組織を顕微鏡で確認し、骨髄液中の細胞の比率や分化状態などを細かく調べます。

②細胞遺伝学的検査(染色体検査)

慢性骨髄性白血病に特徴的なフィラデルフィア染色体が陽性の細胞の有無・比率を調べるため、Gバンド法という分析を行います。

Gバンド法は、骨髄細胞中の染色体異常を検出する方法で、慢性骨髄性白血病の確定診断や、治療効果を確認するために利用します。

この方法では、フィラデルフィア染色体が陽性の細胞の比率だけではなく、他の染色体異常の有無も調べることができます。

画像検査

治療開始前には、より適切な治療法を選択するために全身状態を画像検査で調べます。

胸部X線(レントゲン)検査、心電図、心臓や頸動脈の超音波(エコー検査)などがあります。

また、治療中も副作用の有無を確認するため、定期的な画像検査を行います。

慢性骨髄性白血病の治療

慢性期の治療の中心となる治療は、分子標的薬の内服(飲み薬)による治療です。

多くの場合は外来通院で治療が可能ですが、薬を欠かさず処方通りに飲み続けることが非常に大切です。飲み忘れると効果が弱まってしまいます。

『チロシンキナーゼ阻害薬』というタイプの分子標的薬で、この白血病に特徴的なフィラデルフィア変異染色体によるチロシンキナーゼの働きを阻害し、無限に生き続ける白血病細胞を死滅させて増殖を抑えます。

それにより白血球・血小板・赤血球の状態を正常に戻し、全身の状態の回復と維持をしながら病期の進行を防ぎます。

移行期・急性転化期に進行すると、慢性期の治療法では十分な効果が得られないため、分子標的薬を増量・変更したり、抗がん剤治療との併用、造血幹細胞移植などが検討されます。

慢性骨髄性白血病では完全な治癒は困難ですが、薬で病気をコントロールしながら長期安定した状態で生活していくことが可能になってきています。

慢性期の治療

チロシンキナーゼ阻害薬を選択し、毎日服用を続けます。

この薬は飲み忘れがあると効果が不十分になるため、薬が決まって分子標的薬の服用を開始した後は、処方通りに欠かさず服用を続けることがとても大切です。

チロシンキナーゼ阻害薬で第一選択になるのは、一番歴史の古いイマチニブ(商品名:グリベック)で、長期間服用したとき効果や安全性に関するデータが十分にある薬です。

ニロチニブ(商品名:タシグナ)やダサチニブ(商品名:スプリセル)は、イマチニブより新しい薬で、イマチニブに比べて白血病細胞の量を減らすスピードが速いとされています。

さらに新しく作用の仕方が違うボスチニブ(商品名:ボシュリフ)ポナチニブ(商品前医:アイシクルシグ)という薬もあります。

承認されて間もない薬のため、副作用について慎重な検討がなされています。

これらの薬剤は、どれが一番優れているというわけではなく、それぞれに飲み方や副作用などの特徴が異なります。

患者さん個々の全身状態や生活様式や希望に合わせ、一番合うと思われるものを選択していきます。

服用を開始以降は定期的に検査をして副作用や治療効果を確認しますが、効果が十分ではない場合や、副作用などで服用が難しい場合には、薬の変更を検討します。

移行期の治療

治療開始の時点ですでに移行期の場合
  • 分子標的薬のダサチニブやニロチニブの服用による治療

など、慢性期とは違うタイプの分子標的薬を選択します。

これらで早期に高い治療効果が得られたときは、そのまま継続して慎重な経過観察を行います。

慢性期の治療中に移行期へ進行した場合
  • それまでに使用していない分子標的薬へ変更
  • 同種造血幹細胞移植ができるケースは、分子標的薬の効果をみながら実施を検討

急性転化期の治療

  • 分子標的薬単独もしくは、分子標的薬と細胞障害性抗がん剤の併用治療
  • 同種造血幹細胞移植を検討

急性転化期の化学療法では、急性白血病の治療と同じ薬剤を使用することが多いですが、治療の効果があっても一時的なものと考えられるため、年齢や全身状態に問題がなく条件が揃えば、造血幹細胞移植を検討します。

移植ができないケースでは、分子標的薬などの治療を継続します。

薬物療法で治療効果が不十分な場合は、ヒドロキシカルバミド(商品名:ハイドレア)など比較的副作用が軽い細胞障害性抗がん剤を使用し、白血球数をコントロールしながら生活の質の維持を目指す治療が中心になります。

チロシンキナーゼ阻害薬とは?

特定の因子だけをターゲットにした分子標的薬には様々な種類がありますが、慢性骨髄性白血病では、『チロシンキナーゼ阻害薬』の登場で飛躍的に治療効果が良くなりました。

チロシンキナーゼは、この白血病に特徴的なフィラデルフィア染色体上遺伝子で常時働くタンパク質です。

この作用によって白血病細胞が不死化し、無限に増殖するようになってしまうと考えられています。また、細胞のさらなる異常にも関わるとされています。

チロシンキナーゼ阻害薬は、チロシンキナーゼの作用を限定的に抑えることができ、白血病細胞が死滅するように働いて白血病細胞を減らしていきます。

他の抗がん剤などと比較してピンポイントで働くので副作用が少なく、長期で飲み続けていくことが可能です。

最初に開発されたイマチニブが登場したのは2001年のことで、それ以降もニロチニブやダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブなどが順次承認されてきています。

現在も開発は続いており、今は薬の反応性が悪い難治性のタイプに対しても、効果が期待できるようになる可能性があります。

現在のところ、薬の服用は生涯にわたって継続する治療になりますが、この先、非常に高いレベルでの安定が維持できる患者さんに対しては、治療を中止できる可能性を目指して臨床試験が行われています。

カテゴリー:こころみ医学|2022年8月26日