白血病とは?白血病の症状・診断・治療
白血病とは?
白血病は、『血液のがん』です。
がんは、遺伝子が傷つき病的となった細胞が無限に増殖(がん化)し、正常な細胞を侵食していく病気です。
がん化した細胞は、血液やリンパ液などにのって全身へと広がっていくこともあります。
白血病でがん細胞となるのは、血液中の白血球、赤血球、血小板いずれかへ成熟する途中の細胞です。
白血病はどのように進行するの?
これらの血球は骨髄内の造血幹細胞という細胞の基礎から造られ、それぞれ違う形態に分化しながら増殖・成熟していきますが、白血病では造血幹細胞の分化に何らかの変異がおき、異常な細胞が無限に増殖するようになってしまいます。
白血病に特有のがん細胞は、『白血病細胞』とも呼ばれます。
一旦増殖を始めた白血病細胞は、何らかの治療をしなければ増殖を止めることがありません。
ごく一部の白血病を除けば早期の治療が肝心で、放置すれば血球を造る骨髄内は白血病細胞で埋め尽くされてしまいます。
その結果、正常な血球が造れなくなって血液の機能は失われ、重大な感染症・出血・貧血などをおこして命に関わります。
白血病はよくなるの?
白血病には数多くの分類があり、症状、進行、治療法や予後(病気の見通し)は、病気の形態によって大きく異なりますが、不治の病と言われた昔に比較して治療方法は非常に進歩し、予後良好となるケースが増えています。
白血病は幼い子供から高齢者まで年齢を問わず発症し、病態に個人差が大きいのが特徴です。
その疑いが持たれたときは大きな病院の血液専門医の元で精査を行い、病態の追及や治療法の選択を慎重にしていくことが大切です。
白血病の種類
白血病には多くの種類がありますが、
大きくはこの4つが代表的な白血病の類型です。
これを見ると、
- 急性/慢性
- 骨髄性/リンパ性
という大きな区分が、白血病にはあることがわかります。
白血病の症状
白血病の症状は種類や病態によっても異なり個人差がありますが、大きくは急性か慢性かで症状の出方が違います。
急性白血病の症状
急性白血病では、症状のあらわれ方が早い特徴があります。
- 貧血症状:動悸・息切れ・疲れやすさ・顔色の悪さなど
- 感染症状:感染しやすさ
- 出血症状:鼻血・歯肉出血・アザができやすい
といった、正常な赤血球・白血球・血小板といった働きができなくなることでの症状が認められます。
また、白血病細胞は他の組織に広がって浸潤(侵入)していきます。
このため、他の臓器や中枢神経に症状が現れることがあり、リンパ性白血病ではリンパ節の腫れが特徴的に認められることがあります。
慢性白血病の症状
慢性白血病では、血液検査で初めて指摘されて異常に気付くことも少なくなく、ある程度成熟した血球細胞が増殖しているため自覚症状が出てくるまでには時間がかかることが多いです。
- 全身倦怠感
- 脾臓の腫れ
- 寝汗
- 体重減少
- 皮膚のかゆみ
- 胃潰瘍
などが、症状として認められることがあります。
しかしながら急速に症状が進行して「急性転化」することがあるので、早期に治療を開始していく必要があります。
白血病の診断と検査
白血病が疑われるのは、健康診断などでの血液検査異常や、リンパ節の腫れや不明熱などの症状になります。
クリニックや病院で血液検査を再検査したうえで、白血病が疑われれば専門性が高いため、血液専門医に紹介されることが一般的です。
白血病を確定診断するためには、
- 骨髄検査
こちらが必須となり、血液専門医が病院で実施することができる検査になります。
骨髄検査には、
- 骨髄穿刺
- 骨髄生検
がありますが、骨髄内の血球状態を顕微鏡で観察し、染色体検査や遺伝子検査、細胞表面マーカー検査なども必要に応じて行っていきます。
急性白血病は、
- 骨髄内に未熟な『芽球』の形態の白血病細胞が20%以上確認
が診断基準となっています。
慢性白血病では様々な分化過程の細胞が混在して異常増殖しており、染色体検査なども行って診断確定していきます。
白血球や血小板、赤血球の数としては、増加している場合も減少している場合もあります。極端に増加している場合などでんなければ、通常の血液検査だけでは診断ができません。
白血病の診断が確定したら、合併症や病気の広がりを調べるために画像検査や髄液検査なども実施していきます。
白血病の治療
白血病の治療は、抗がん剤による化学療法が中心となり、多剤で集中的な抗がん剤治療を行っていきます。
副作用を抑えるための支持療法の発展もあり、治療をしっかり継続できることで、治療成績もよくなってきています。
また染色体異常や遺伝子異常が認められるような慢性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病では、分子標的薬による治療も行われます。
白血病のタイプ別に大きな方針として、以下のようになります。
- 急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病:抗がん剤治療
- 慢性骨髄性白血病:分子標的薬の継続
- 慢性リンパ性白血病:症状が出るまで経過観察※抗がん剤や分子標的薬治療を必要に応じて
これらの治療がうまくいかない場合は、造血幹細胞移植などが検討されます。場合によっては緩和療法を選択肢し、残された生活の質を重視することもあります。
抗がん剤治療と副作用
白血病の抗がん剤治療は、入院して集中的に行っていきます。
治療ステップとしては、以下の3つがあります。
- 寛解導入療法
- 地固め療法
- 維持療法
まずは顕微鏡検査レベルで白血病細胞がなくなる「寛解」をめざします。さらに、みえない白血病細胞をたたくため、地固め療法を追加します。
完全寛解が達成されたら、その病状に合わせて維持療法を行っていきます。5年の安定を目指していきます。
代表的な副作用としては、
- 感染しやすさ:白血球の減少
- 貧血や出血傾向:赤血球や血小板の減少
- 吐き気や嘔吐
- 下痢
- 脱毛
- 発熱
などの副作用があり、特に感染対策には注意をします。
そして支持療法とよばれる対処療法も、しっかりと行っていきます。
その他の白血病治療
その他にも、分子標的治療(フィラデルフィア染色体陽性でのチロシンキナーゼ阻害薬・急性前骨髄性白血病でのビタミンA分化誘導療法)、難治な場合の移植療法などがあります。
- 分子標的治療
- 造血幹細胞移植(同種造血幹細胞移植)
- 骨髄非破壊的移植(ミニ移植)
- 臍帯血(さいたいけつ)移植
- 放射線治療
- 支持療法
- 緩和療法(生活の質を重視する治療)
白血病と日常生活
白血病で治療効果が得られた場合は、日常の生活へ戻ることが可能です。
急性白血病の場合は集中的な抗がん剤治療と入院生活でしばらくは体力がかなり落ちているため、自宅に帰ってもしばらくは無理をせず、少しずつ日常のリズムを取り戻していくことが大切です。
仕事への復帰などは主治医と十分に相談しながら決めていきましょう。
抗がん剤治療後、とくに注意が必要なのは感染症対策です。身体を温かく保ち、手洗いやうがい、外出時のマスクの使用、傷に注意するなど感染症を予防しましょう。
それ以外は、気分の良いときは近くの散歩や簡単な家事などをしながら、無理のない範囲で体力の回復に努めます。疲れたら休みましょう。
万が一、発熱、胸痛、息切れや長引く咳などの症状があっとときは担当医へ連絡をしましょう。
通院と検査
治療終了後は、経過観察と検査のために定期通院を行います。
頻度や内容は状態によって異なりますが、
- 血液検査
- 血液検査結果を踏まえた診察
これが基本となります。病態に応じて、画像検査や骨髄検査、骨シンチグラフィなどを行います。
通院頻度は、一般的には1~2週間ごとに通院して検査を行い、状態が安定していれば通院の間隔を1カ月、2カ月と開けていきます。
それでも安定が続きそれ以上の治療が必要ない場合には、3~6カ月に1度、再発がないかどうかを確認するための通院だけになります。
慢性白血病では、一部の慢性リンパ性白血病を除き、基本的に通院での服薬を続けながら日常生活をおくります。
その際は、毎日処方通りに薬を飲むことが大切です。生活上のことなどは病態によっても違うため、気になることは主治医とよく相談しましょう。
効果が得にくい難治例では、どのような治療や過ごし方をしていくかは、患者さんの希望も重視されます。
主治医への相談はもちろんのこと、がん相談センターなどの外部機関にセカンドオピニオンをされる方もいらっしゃいます。
当院でも、日本の第一人者がセカンドオピニオン外来を実施しています。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
上野御徒町こころみクリニックでは、血液患者さんの治療と社会生活の両立を目指し、大学病院と夜間連携診療を行っています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年8月26日
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