タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の効果と副作用
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タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)は、特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の治療に使われる経口血小板破壊抑制薬です。
2023年4月に承認された薬剤であり、従来の治療では十分な効果が得られなかった場合に処方されます。
今回は、タバリスの効果や副作用について解説します。
タバリスとは?
タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)は、低分子チロシンキナーゼ阻害剤に分類される特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)の治療薬です。
内服後、小腸のアルカリホスファターゼ(薬の形を変える酵素)によって活性化され、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)を阻害します。
タバリスの適応
タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の適応として、以下が認められています。
- 慢性特発性血小板減少性紫斑病
特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)とは、血を固める作用を持つ血小板の数が減少してしまう病気です。
血小板に対する自己抗体の産生により血小板数が減少し、あざや鼻血、血便などの症状が現れます。
自己免疫疾患の一つであり、国が定めている指定難病にも登録されている疾患です。
特発性血小板減少性紫斑病は「急性型」と「慢性型」に分類されます。
特発性血小板減少性紫斑病の分類
- 急性型:3ヵ月から半年以内に治癒するもの(小児に多い)
- 慢性型:半年以上病状が継続しているもの(20~40代の女性・60~80代の高齢者に多い)
タバリス錠は、特発性血小板減少性紫斑病の病状が長く続いている「慢性型」の場合に処方が検討されます。
タバリスの効果
タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)は体内に入った後、小腸のアルカリホスファターゼによって「R406」へ形が変わり、体内に吸収されます。
体内に吸収された後は、脾臓マクロファージ内のSyk(脾臓チロシンキナーゼ)の働きを抑えます。
特発性血小板減少性紫斑病は、自己抗体がついた血小板が脾臓マクロファージにより貪食されている状態にあります。
タバリス錠の内服によりSykの働きが抑えられることで、血小板の貪食や破壊が軽減し特発性血小板減少性紫斑病の病態が改善されます。
タバリスの用法
タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の用法は、以下の通りです。
初回投与量100mgを1日2回、経口投与
※初回投与量を4週間以上投与しても目標とする血小板数の増加が認められず、安全性に問題がない場合は150mgを1日2回に増量
血小板数、症状に応じて適宜増減するが、最高投与量は1回150mgを1日2回
タバリス錠は基本的に1回1錠を1日2回内服する薬剤です。受診時に血液検査を行い、血小板数を確認しながら増量・減量を行います。
また、副作用の下痢や高血圧などが顕著に現れている場合は、減量や休薬をすることもあります。
タバリス錠は食事に関係なく内服できますが、1回内服したら8時間以上は空けて内服をしましょう。
「8時と20時に内服」のように、毎日飲む時間をあらかじめ決めておくとタイミングを迷わず内服ができます。
タバリスの副作用
タバリス錠による副作用で特に注意すべきものが「下痢」「高血圧」です。
下痢の症状が出ると「脱水症状」を起こしやすくなるため、水分補給を怠らないよう心がけてください。
また、1日に4回以上の下痢が続く場合は、早めに処方医へ相談をしましょう。症状に伴い「下痢を止める薬の追加」や「タバリス錠の休薬」が検討されます。
タバリス錠の服薬による高血圧も、比較的高い頻度で見られます。受診時だけではなく、ご自宅でも血圧を定期的に測れるのが理想です。
最高血圧140mmHg以上、または最低血圧90mmHg以上が続く場合は、処方医へ相談をしましょう。
頭痛・めまいなどは日常的に起きやすい症状ですが、血圧の上昇が原因の場合もあります。これらの症状が出た際には、一度血圧を測り書きとめておくと処方医へ伝えやすくなるでしょう。
タバリス錠による高血圧が見られる場合は「血圧を下げる薬の追加」「タバリス錠の休薬」が検討されます。
主な副作用と頻度
タバリスの副作用頻度は、以下の通りです。
- 下 痢:30.3%(10/33例)
- 高血圧:27.3%(9/33例)
- 肝機能検査値上昇 :9.1%(3/33例)
- 好中球数減少 :9.1%(3/33例)
- 肝機能異常 :6.1%(2/33例)
参考:国内第III相臨床試験・R788-1301試験
妊娠
妊娠中の方や妊娠の可能性がある方の場合は、タバリス錠を内服しないよう注意喚起されています。
海外での臨床試験において妊娠中の患者さんがタバリス錠を内服したところ、自然流産・死産が見られたと報告されているためです。
また、非臨床試験(ラット・ウサギを対象にした試験)においても、胎児死亡率の増加や胎児の低体重・内臓異常が報告されています。
授乳
タバリス錠を内服している場合は、授乳をしない方が望ましいとされています。
非臨床試験(ラットを対象にした試験)において、乳汁中への移行が報告されているためです。
また、乳汁を介した曝露によって、出生児の死亡率増加や低体重も認められています。
タバリスの薬価
タバリスの薬価は以下の通りです。
※2023年4月現在
- 先発品(タバリス錠):100㎎・4188円、150㎎・6226.8円
- 後発品:未発売
まとめ
- タバリス錠は、慢性特発性血小板減少性紫斑病に使われる治療薬です。
- Syk(脾臓チロシンキナーゼ)の働きを阻害し、マクロファージによる血小板の貪食を抑えます。
- タバリス錠の副作用で高頻度に見られる症状が「下痢」と「高血圧」です。
- タバリスの薬価は、100㎎錠が4188円、150㎎錠が6226.8円です。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年11月3日
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