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コロナ後遺症の症状・診断・治療
コロナ後遺症とは?
新型コロナウイルス感染症では、さまざまな症状を引き起こす後遺症について注目が集まっています。
ほとんどの方は時間の経過とともに症状が薄れていく一方で、半年あるいは1年以上も後遺症に悩まされている方も少なくありません。
そのため、ロングコビット(long COVID)と呼ばれることもあります。
コロナ後遺症には個人差があるものの、心身ともにケアしていくことが必要となります。
コロナ後遺症の発症率
厚生労働省が発行する「新型コロナウイルス 診断の手引き 罹患後症状のマネジメント・第2.0版」にて、国内のコロナ後遺症の症状発症率を以下のように報告しています。
コロナ後遺症の症状
コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、非常に多くの症状が認められます。
コロナ後遺症の中でも注意すべき症状は倦怠感です。
とくに問題となるのが、コロナにかかる前は問題なく行っていた活動に強い倦怠感が生じてしまう、労作後倦怠感(Post-exertional malaise, PEM)と呼ばれる現象です。
このPEMを繰り返すと、悪化した症状が半年以上持続して、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群((Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome, ME/CFS)に移行すると考えられています。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に移行すると、強い倦怠感から日常生活を送ることが難しくなり、長期に渡って横になって過ごすといった状態になります。
ブレインフォグ
コロナ後遺症の症状としてもうひとつ代表的なものは、「脳のもや・「脳の霧」と表現されるブレインフォグです。
いわゆる認知機能の低下になりますが、コロナ関連ストレスにともなる精神症状としてのうつ(思考抑制)だけでなく、コロナ感染により脳の構造変化がおきていることが、イギリスのデータ解析でわかっています。
- 眼窩前頭皮質と海馬傍回での灰白質の厚さ・組織のコントラストの大幅な減少
- 一次嗅皮質に機能接続領域の組織損傷マーカーの大きな変化
- 全体的な脳サイズが大幅に減少
論文については、【新型コロナウイルスは脳の構造変化に関連:UKバイオバンク】を参照ください。
胃食道逆流症と亜鉛・鉄不足
コロナ感染後に胃酸逆流が起きやすいといわれていますが、通常の胃食道逆流症と違った特徴があります。
通常は胸やけや呑酸(酸っぱいと感じること)がおもな症状となりますが、コロナ感染後の胃酸逆流では、こういった症状は比較的少ない傾向にあります。
コロナ感染後の胃酸逆流のおもな症状は、喉の渇きを伴う中途覚醒・息切れや動悸です。
この胃酸逆流を繰り返すことで、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群が悪化する可能性があります。
また、血中亜鉛濃度や血中貯蔵鉄(フェリチン)濃度の低下が認められており、嗅覚障害・味覚障害・脱毛は、亜鉛が欠乏することへの関連性が示唆されています。
コロナウイルスの変異株による症状変化
新型コロナウイルスは、変異を重ねながら流行を繰り返しています。
そのような中で、症状の特徴も流行株によって変わってきました。
デルタ株以前では、嗅覚障害や味覚障害が特徴的で、コロナ感染を疑う症状として注目されました。
オミクロン株以降は嗅覚・味覚障害の方は少なくなり、咽頭痛が多くなりました。
コロナ後遺症については、重症化リスクの下がったオミクロン株では後遺症が10.8%から4.5%程度に下がったと報告されています。
ウイルスの特性として後遺症を起こしにくくなっているとのことですが、それでもこの感染拡大の中で、コロナ後遺症の方は増えています。
【SARS-CoV-2のデルタ変異株とオミクロン変異株に関連したロングCOVIDのリスク】
コロナ後遺症の検査と診断
コロナ後遺症に関しては、十分な知見がまだありません。
そのため、経緯や症状を問診で詳しく伺い、他の疾患や合併症がないかを確認していきます。
症状の原因を追求するため、甲状腺機能などの問題がないかの確認も必要です。
コロナ感染による下記のような合併症や、亜鉛と鉄の不足を確認するため、心電図や採血を行っていきます。
- 心筋炎
- 血液凝固能の亢進(血液が固まりやすくなる)
- 腎不全
この他に、必要に応じてCT検査を行うこともあります。
検査結果により、専門性の高い大きな総合病院で治療が必要であれば、紹介状を書くことも可能です。
コロナ後遺症の治療
コロナ後遺症には、明確なメカニズムや有効な治療法の解明がされていません。
しかし、臨床的に有効であると思われる対処法が、以下のように確認されています。
- 生活療法
- 薬物療法
- 慢性上咽頭炎治療
- 東洋医学
- TMS治療
それぞれを解説していきましょう。
生活療法
生活療法で重要なのは、ゆっくり休養することと、「PEM (post-exertional malaise)労作後の倦怠感」を避けることです。
PEMとは、何か行動を行った後の極端な疲労感・倦怠感を起こすことをいいます。
また、心理的な面では、急性期を過ぎると無意識にストレスから身を守ってしまうこともあります。
そのため、心身ともにトータルバランスをみながら治療を考えていく必要があります。
薬物療法
薬物治療においては対症療法が中心となりますが、ビタミンなどの栄養素の補給も必要に応じて行い、うつ病や不安症状がある場合は、抗うつ薬を処方することもあります。
なかでもフルボキサミンには抗炎症作用があるため、コロナの重症化を低下させるといった報告があり、コロナ後遺症で処方されることも増えています。
慢性上咽頭炎治療
コロナ後遺症には、慢性上咽頭炎という疾患を併発していることが多く、耳鼻科で行う上咽頭擦過療法(Bスポット療法、EAT)で改善することがあります。
東洋医学
コロナ後遺症では、西洋医学的な治療法が確立されていません。
西洋医学は患部に対し、ピンポイントで治療していくものですが、一方で、東洋医学は全身の状態を確認し、身体のバランスを取る治療です。
コロナ後遺症のようにメカニズムが解明されていない病気に対し、ひとつの治療選択肢となります。
東洋医学の治療は、漢方薬で全身のバランスを調整し、鍼灸で状態に適したツボを針で刺して刺激を加えることで、本来の治癒力を高めていくといった治療です。
TMS治療
TMS(Transcranial Magnetic Stimulation:反復経頭蓋磁気刺激療法)とは、うつ病では新しい治療法として注目されており、背外側前頭前野を含む前頭葉を「磁気をうまく利用して刺激」による治療法です。
TMS治療がコロナ後遺症に効果があるかはわかっていませんが、上述したように新型コロナウイルスで脳の構造変化が報告されています。
脳の構造の変化が認められたということになると、工夫次第ではTMS治療での改善が期待できると考えることもできます。
さらに、コロナ後遺症ではうつ状態になってしまう方も多く、うつ症状を伴う場合はTMS治療の効果は期待できるのは間違いありません。
厚生労働省のガイドラインでも、エビデンスに乏しいとの記載がある状態ではありますが、当法人では東京横浜TMSクリニックみなと東京院を運営しており、この治療が適切であるかの相談いただくことができます。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
上野御徒町こころみクリニックでは、血液患者さんの治療と社会生活の両立を目指し、大学病院と夜間連携診療を行っています。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年12月16日
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