どうして貧血になるの?貧血の原因と代表的な病気

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貧血の原因

貧血の原因は実に多彩で、単純な栄養バランスの乱れの場合もあれば、重大な病気が関わっていることもあります。様々な病気に合併して貧血はおこります。

その中で一般的によく見られる貧血の原因としては、

  • 慢性出血
  • 栄養素の不足

による貧血になります。

慢性出血は、

  • 月経過多
  • 子宮筋腫
  • 消化管出血(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がんなど)

など、出血の自覚の持ちにくい性器や消化管からの出血によるものが中心です。

栄養素の不足では、

  • ビタミンB12
  • 葉酸

などの不足で貧血がおこります。

とくに鉄はヘモグロビンの主成分になるミネラルのため、鉄不足による鉄欠乏性貧血がもっとも多く、貧血全体の約7割を占めます。

その他の原因も含め、貧血の原因を大きく分けると、

  • 赤血球が上手くつくられない
  • 赤血球が失われる

のいずれかが考えられます。

赤血球が上手くつくられない原因

  • 栄養の不足(鉄、ビタミンB12、葉酸など)
  • 栄養の吸収不全(胃壁の障害、胃切除、腸の吸収力下など)
  • 慢性炎症(がん、膠原病など)
  • 腎臓の病気
  • 肝臓の病気
  • 骨髄の病気

などが原因となります。

赤血球が失われる以外の貧血の原因としては、そもそも赤血球の産生が上手くいかず、赤血球が不完全だったり、全体の数が少なかったりすることが考えられます。

一番多いのは鉄の不足による鉄欠乏性貧血で、ヘモグロビンの原料として必須であるミネラルの鉄量が体内で不足し、十分な大きさや量の赤血球がつくられなくなってしまい貧血がおこります。腸の吸収障害によって、鉄が不足することもあります。

ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球細胞のDNA合成に異常がおこります。

ビタミンB12の吸収には胃壁からの内因子と呼ばれる分泌物が必要ですので、胃の全摘をしたり胃壁が障害を受ける病気で不足しやすいビタミンです。葉酸は妊娠中、とくに多く消費されます。

栄養の不足による貧血は、

  • 年齢や体質に見合った量が摂取できていない
  • 吸収力低下により摂取しても吸収されない
  • 慢性出血などで必要以上の栄養分が消費されている

の3つのケースがあり、原因に応じた対処が必要です。

単純に摂取量が足りていないのならそれを補えばいいのですが、吸収不全の状態があれば口からの摂取では補えません。その場合は病院で点滴や筋肉注射での補充を行います。

栄養不足以外に赤血球が上手くつくられない原因としては、腎不全により赤血球産生促進をするホルモン(エリスロポエチン)の応答が悪くなったり、肝臓の病気や内分泌異常で腎臓由来のホルモンが影響を受けることもあげられます。

あとは非常に稀ですが、赤血球をつくる骨髄の造血細胞自体に問題がおこり、赤血球に限らず血液細胞すべてが減少する悪性不良貧血という難病もあります。

赤血球が失われる原因

  • 慢性出血(月経異常、消化管出血など)
  • 赤血球が壊れる病気
  • 赤血球がもろくなる病気
  • 免疫の異常
  • 振動や衝撃が過度にかかるスポーツ

などが原因となります。

赤血球は骨髄の中の造血細胞でつくられています。産生された赤血球には寿命があり、120日程度の周期で脾臓や肝臓で破壊されるため、通常は新しい赤血球が補充されて濃度を一定に保っています。

しかし、慢性的な出血や、若い赤血球が血管内で破壊されてしまうような状態があると、新しい赤血球の補充が追いつけません。赤血球が失われる原因になる病気には数多くの種類があります。

何らかの原因で赤血球が失われておこる貧血では、失われる原因を見つけ、治療することが大切です。

貧血を引き起こす病気

それでは、貧血を引き起こす病気を具体的にみていきましょう。

鉄欠乏性貧血の症状をイラストで血液専門医がご紹介します。

貧血の原因の中で最も多いのは、鉄欠乏性貧血になります。貧血全体の約7割をしめ、

  • 栄養素としての鉄の摂取不足
  • 慢性的な出血による鉄の喪失

の2つが原因となります。

巨赤芽球性貧血の特有な症状を、血液専門医がイラストでご紹介します。

また、赤血球をつくっていくのに重要な栄養素として、ビタミンB12と葉酸があります。

これらの栄養素が不足すると、DNA合成に異常がおこってしまい、通常より大きなサイズの赤血球がつくられるようになります。サイズは大きいのですが数としては少なくなってしまい、巨赤芽球性貧血と呼ばれます。

  • 栄養素としてのビタミンB12 ・葉酸の摂取不足
  • 胃壁の障害や胃全摘によりビタミンB12が吸収できなくなる(悪性貧血)

などが原因となります。

溶血性貧血とは?溶血性貧血の症状、診断、治療について、専門医が詳しく解説していきます。

それ以外に多い貧血として、溶血性貧血が挙げられます。

  • 振動や衝撃が過度にかかるスポーツ
  • 免疫の異常
  • 異常赤血球が作られるようになる

などにより、赤血球が壊されてしまい、溶け出してしまう貧血になります。

『鉄欠乏性貧血』を詳しく知りたい方へ
『巨赤芽球性貧血(悪性貧血)』を詳しく知りたい方へ
『溶血性貧血』を詳しく知りたい方へ

それ以外の貧血を引き起こす病気としては、以下のようなものがあります。

腎性貧血

赤血球の産生は骨髄で行われていますが、その産生を促すには腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンの刺激が必要です。

腎臓の病気で腎機能が障害されるとエリスロポエチンの応答が悪くなるため、貧血がおこりやすいのです。

重度の腎不全の人には多くの場合腎性貧血が見られますが、軽度の腎機能障害でもおこることがあるので注意が必要です。

治療には、エリスロポエチン製剤の注射を使います。

腎臓の障害以外でも、甲状腺や副腎や下垂体などの内分泌器官の低下があった場合、ホルモン分泌のバランスが崩れ、エリスロポエチンの産生抑制がおこることがあります。

慢性炎症(二次性貧血)

長期の感染症、リウマチなどの膠原病、がんなど、体内に慢性的な炎症のおこる病気が長くなると貧血がおこることがあります。

病気が直接貧血の原因になっているのではなく、炎症が長く続いて赤血球をつくるための正常な働きが障害を受け、結果として貧血がおこってくるのです。

炎症は本来病気に侵された部位や感染源を取り除くための反応ですが、それが重くなると健全な部位の方まで炎症が広がってしまうことがあります。

病原菌を除去するための免疫細胞が自らの赤血球まで攻撃したり、病原菌の発する毒素によって赤血球がダメージを受けたりすることもあります。

また炎症がおこると、肝臓でヘプシジンというホルモンの合成が増えます。

ヘプシジンには、赤血球の材料である鉄の吸収や利用を抑制する作用があるため、ヘプシジンが増えると赤血球の産生が阻害され、貧血になってしまうのです。

炎症がなくとも、何らかの病気の結果ホルモンや臓器に異常がおこったり、薬剤による影響が二次的に貧血を引き起こす病気は数多くあります。それらは二次性貧血と呼ばれますが、非常に多くの病気に貧血は合併することが知られています。

いずれも、対症療法とともに、原因となっている病気のコントロールが必要です。

二次性貧血の原因となる病気の例としては、

  • 感染症
  • 膠原病(リウマチなど)
  • がん
  • 慢性腎不全
  • 内分泌疾患
  • 肝疾患

などが挙げられます。

再生不良性貧血

再生不良性貧血とは?再生不良性貧血の症状や診断、治療の概要を、血液専門医がまとめていきます。

再生不良性貧血は、骨髄の造血細胞に異常がおこり、赤血球に限らず白血球や血小板も不足してしまう病気です。

頻度は稀で、難病に指定されています。検査や治療は大きな病院の血液内科でないと対応ができません。

この貧血では赤血球数の減少とともに、白血球中の好中球数の減少、血小板数の減少も見られます。

免疫担当の白血球が減るので感染症にかかりやすくなり、血液凝固作用のある血小板の減少により、出血しやすく血が止まりにくくなります。

再生不良貧血の原因としては、

  • 先天性の遺伝子の異常(Fanconi貧血)
  • 免疫の異常で造血細胞が破壊される
  • 薬剤や放射線の影響(続発性)

などがあげられていますが、原因不明の場合(特発性)が多いです。

重症度や年齢によって治療は異なりますが、基本はアンドロゲンなどの蛋白同化ステロイドの投与をして造血刺激をしたり、免疫抑制療法を行っていきます。

40歳以下で血縁者からの移植が行える場合には、同種骨髄移植も検討されます。免疫抑制療法の効果もなく血縁者ドナーもいない場合には、非血縁者間の造血幹細胞移植も選択肢になります。

そして血球減少による症状を抑えるために、必要に応じてG-CSF(好中球減少)やエリスロポエチン(赤血球減少)などを投与したり、血小板輸血や赤血球輸血などを行います。

『再生不良性貧血』を詳しく知りたい方へ

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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年10月1日

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