実は貧血の症状?見過ごされがちな「隠れ貧血」

「隠れ貧血」とは?

隠れ貧血について、血液専門医が詳しく解説します。

最近は「隠れ貧血」という言葉が世の中にでています。医学的には、隠れ貧血などという病名はありません。

しかしながら、血液検査でのヘモグロビン濃度に異常はないものの、だるい、息切れがするなど貧血に似た症状が見られることがあります。

そして詳しく調べてみると、血清鉄やフェリチンの値が低下していることがあります。その場合を「隠れ貧血」の状態といっています。

あえて隠れ貧血という言葉を使っていきますが、隠れ貧血は貧血の1歩手前の鉄不足の状態です。鉄剤を使うことで、症状が改善していきます。

このように隠れ貧血は、

  • 血清鉄
  • 血清フェリチン

という血液検査の項目でわかります。血清フェリチンは、体内に蓄えられている鉄分の量を測定した値です。

けれど、一般的な血液検査で血清フェリチンを調べることは少ないですし、それを疑って調べる医師も多くはないので、見逃されてしまうことが少なくありません。

家計で考えてみると

隠れ貧血を考えていくには、検査値を以下のように考えてみるとわかり易いです。

  • ヘモグロビン:生活水準
  • 血清鉄:お財布のお金
  • 血清フェリチン:通帳のお金

このように考えたときに、生活水準は何とか維持できているものの、お財布にも通帳にもお金がなくてカツカツな状態を「隠れ貧血」とよんでいます。

血清フェリチンが80~30ng/ml程度なら、以下のような症状が出ていてもおかしくありません。

  • 顔色悪く、肌がくすんだり肌荒れしたりしている
  • 下まぶたの内側(結膜)が白い、目の下に青くまがある
  • 寝起きが悪い、睡眠不足が続いている
  • 風邪をひきやすい、風邪のような倦怠感が続いている
  • めまいや立ちくらみが多い
  • ちょっとした坂道や階段で動悸や息切れがする
  • 爪の色が白っぽい、割れたり欠けたりする
  • 枝毛や抜け毛が多い

日頃の生活習慣に気をつけよう

鉄欠乏性貧血の予防のためにも、日ごろの生活習慣が重要です。

生活習慣についても、

  • ダイエットをしている
  • 朝食を抜くことが多い
  • インスタント食品や冷凍食品を食べることが多い
  • 外食や市販の弁当が中心の食生活が続いている
  • 偏食で肉魚や野菜などをバランス良く食べていない

こういった点が当てはまる方が多いです。

このような症状であるため、隠れ貧血は慢性疲労症候群やストレス性の反応と診断されがちです。

とくに、仕事の忙しい方は疲労やストレスによる症状だろうと判断されてしまいがちですが、実は食生活の乱れによる栄養不足が主な原因になっていることも多いのです。

多忙の方は食生活の改善がなかなか難しいかもしれませんが、必要に応じてサプリや栄養剤の処方を合わせながら対応していくと、症状の改善が見られるようになります。

症状や生活習慣に思い当たることがあれば、ご相談ください。

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医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
上野御徒町こころみクリニックでは、血液患者さんの治療と社会生活の両立を目指し、大学病院と夜間連携診療を行っています。
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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年10月1日

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