慢性リンパ性白血病の症状・診断・治療

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慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)

慢性リンパ球性白血病とは?慢性リンパ球性白血病の症状、診断、治療について、専門医が詳しく解説していきます。

慢性リンパ性白血病(CLL)と小リンパ球性リンパ腫(SLL)は、白血球の1つであるリンパ球のうち、成熟した小型のB細胞系リンパ球が病的な細胞のかたまり(腫瘍)になり、増殖していく白血病です。

腫瘍細胞が主に血液中や骨髄内に確認されるときは『慢性リンパ性白血病』、主にリンパ節で確認されるときは『小リンパ球性リンパ腫』と区別されていますが、腫瘍となっている細胞は同じものです。

白血病の中では症状や進行が一番おだやかで、初期にはリンパ節のみで腫瘍が増殖し、骨髄内の血球には影響しないため、ほとんど症状がおこりません。

病気が進行すると赤血球・白血球・血小板の減少がおこり治療が必要になりますが、経過観察のままで寿命を全うする場合もあります。

この白血病は欧米人では比較的多く発症するのに対し、日本も含めたアジア人種には珍しいタイプの白血病で、日本での発症率は1年間で10万人に0.3人前後です。

60歳代以降の中高年が中心で、1.5倍~2倍男性の患者さんが多いのが特徴です。

慢性リンパ性白血病(CLL:Chronic Lymphocytic Leukemia)

腫瘍細胞は成熟した小型のBリンパ球であることがほとんどで、表面に細胞表面マーカーのCD5とCD23という分子があることが特徴で、血液内や骨髄の他、脾臓(ひぞう)、肝臓、リンパ節などのリンパ組織で増殖します。

日本での発症頻度は少なく、発症率は1年間で10万人に0.3人前後です。

60代以降の中高年に多く発症し、30歳未満ではごく稀です。女性より男性に多く、男性の患者さんは女性の1.5~2倍程度とされています。

この白血病は発症に人種差があり、欧米などでは多く確認されています。

小リンパ球性リンパ腫(SLL:Small Lymphocytic Lymphoma)

がん化した細胞は慢性リンパ性白血病と同じものですが、病期や治療は濾胞性リンパ腫やMALTリンパ腫など、悪性度の低いB細胞系リンパ腫と同じと考えられています。

進行は非常にゆっくりで、初期にはリンパ節でのみ腫瘍が増殖します。

病気が進行し、症状が現れたときには化学療法による治療を行いますが、しばらくの間は慎重に経過観察をしながら見守ります。

慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)の症状

急性骨髄性白血病(AML)の症状

この白血病は発症しても進行がとてもゆっくりなので、初期にはほとんど症状が現れませんが、多くは

  • 痛みをともなわないリンパ節の腫れ

がみられます。

リンパ節は首、脇の下、付け根(鼠径部)などに多いので、これらの部位にしこりや腫れぼったい感じが出て増大していき、腫れがひくことがありません。リンパ節の腫れは、約80%の患者さんで確認されます。

病気が進行すると、

  • 体が疲れやすい、だるい(倦怠感)
  • 食欲が低下する
  • 体重減少
  • 寝汗
  • 微熱
  • 脾臓や肝臓の腫れ(腹部の張りや違和感)

などの症状が現れることがあります。

さらに進行して骨髄内の腫瘍細胞の数が増えると、他の正常な血球細胞(赤血球・白血球・血小板)が減少し、

  • 貧血(赤血球減少)
  • 出血しやすくなる(血小板減少)
  • 感染しやすくなる(正常白血球の減少)

などがおこります。

とくに慢性リンパ性白血病では貧血がおこりやすく、自己免疫性溶血性貧血による重度の貧血が合併することがあるので注意が必要です。

慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)の診断

慢性リンパ性白血病(CLL)

  • 血液中の腫瘍細胞であるリンパ球の数が5,000/μL以上
  • 血液中のリンパ球の数が5,000/μL未満でも、腫瘍細胞が骨髄に浸潤し、赤血球・白血球・血小板の減少がある

小リンパ球性リンパ腫(SLL)

  • 血液中のリンパ球の数は5,000/μL未満
  • 血液中の赤血球・白血球・血小板の減少はない
  • がん化したリンパ球は主にリンパ節で確認される
  • リンパ節が腫れている

慢性リンパ性白血病の原因

この白血病の原因は、十分には解明されていません。

欧米人に多くアジア人ではまれであることから、環境的な因子より遺伝的な素因にかかわって発症するのではないかと考えられています。

すべての白血病の中で、もっとも遺伝的要素の高いタイプとされています。

慢性リンパ性白血病の予後

慢性リンパ性白血病は、白血病の中でもとくに予後が良好なタイプで、経過観察のまま未治療で寿命を全うできる患者さんもいます。

しかしながら、病気が進行したときには血球が減少し、感染症や自己免疫疾患などを合併することがあるため、定期的な通院で検査を行っていくことが大切です。

慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療

慢性リンパ性白血病は、完全な治癒は難しいものの、病気をコントロールしながら長期生存が可能な白血病です。

一部の若年者では、高齢者の患者さんでは、症状の緩和や病状のコントロールを目的とした治療が主です。

治療では、抗がん剤や分子標的薬の単剤か、多剤併用療法を状態によって選択します

17番染色体短腕の欠失(染色体17p)が確認される場合や、薬による治療効果が得られず予後不良と考えられる場合には、造血幹細胞移植が検討されることもあります。

この白血病は進行がゆっくりのため、慎重に経過観察を行いながら治療開始のタイミングをはかります。

大きなリンパ節の腫脹・貧血・血小板減少などが発現してきたら、治療を開始します。

低リスク

早期からの治療を行っても生存期間は延長しないため、慎重な経過観察を行います。

中間リスク

病気の進行はまだゆっくりであるため、慎重な経過観察を行います。

高リスク

治療の対象となる時期です。発熱・寝汗・体重減少などの全身症状、大きなリンパ節腫脹や肝臓・脾臓(ひぞう)の腫大、貧血や血小板減少といった症状が治療の開始基準となります。

70歳未満で全身状態に問題がなければ、多剤併用療法を行います。

抗がん剤によるFC療法などが行われます。フルダラビン(商品名:フルダラ)+シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)による治療です。

そのほか、分子標的薬のリツキシマブ(商品名:リツキサン)を組み合わせた治療が一般的です。

全身状態によっては、上記の薬の単剤での投与や、減量して投与をします。

自己免疫性溶血性貧血や血小板減少の症状がある場合は、副腎皮質ステロイドの投与も行います。

リンパ節の腫脹へは、放射線治療が行われることもあります。

抗がん剤を使った治療では、開始当日から治療後数か月頃まで様々な副作用が起こりますが、治療と併用して副作用へはできる限りの対策を行います。

分子標的治療

通常の治療では、がん細胞の増殖に関わる分子に限って効果を発揮する『分子標的薬』を使用します。抗がん剤と組み合わせ、点滴や内服で投与します。

この白血病で使用される代表的な分子標的薬はリツキシマブという薬で、リンパB細胞の表面にある『CD20』という分子を標的とした薬です。

CD20は細胞の増殖や活性に関わる因子で、がん化したB細胞に多く出現します。リツキシマブはこのCD20の働きを抑え、がん細胞が増殖しないようにします。

再発や難治性の場合は、同じく『CD20』を標的として働きの異なるファツムマブ(商品名:ケシンプタ)などが使われます。

『CD52』を標的としたアレムツズマブ(商品名:マブキャンパス)が選択されることもあります。アレムツズマブは予後不良と予測されるケースにも高い治療効果が期待されています。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、提供者(ドナー)から採取した健全な造血幹細胞を投与する治療法です。

薬だけでは治療が困難で、造血幹細胞移植を行うことで予後が改善されると考えられるときに検討されます。

負担も大きい治療でドナーの必要性もあることから、年齢、全身状態、ドナーの有無など様々な点を考慮して慎重に選択されます。

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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年8月26日

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