COPD(肺気腫)の症状・診断・治療
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COPD(肺気腫)とは?
慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とは、長期的な喫煙が原因で、肺胞(肺の組織)が破壊され、呼吸器症状を引き起こす病気です。
しかし、壊れてしまった肺胞を元に戻すことはできません。
そのため、治療は症状を和らげるための対症療法のみで、重症化すると在宅酸素を吸入する必要があります。
自覚症状が少ない人も多く、気づいたら悪化していたということもあるので、早めに禁煙することが重要です。
肺気腫の症状
肺気腫の症状は、長引く咳と息切れ、一日中痰が絡むといった呼吸症状が中心となり、非常にゆっくり進行していきます。
そのため、症状がなかなか現れず、重症になってから気づくといったケースが多いです。
近年では、肺の炎症が広がることにより、全身に影響をもたらすことが問題視されています。
全身に炎症が広がると、以下のような障害が出現します。
- 骨粗しょう症
- 栄養障害
- 骨格筋の機能障害
- 心臓や血管の障害
- 腹部の消化管障害
- 代謝障害
- メンタルの障害
このように炎症が広がってしまうと、全身の機能が低下してしまいます。
アメリカで実施された疫学調査によると、肺気腫の患者約1,000症例のうち、半数近くの患者が以下のような併存症があることも報告されています。
- 高血圧症
- 高コレステロール血症
- 抑うつ
- 白内障
- 骨粗しょう症
さらに、現在の医療では、一度壊れてしまった肺胞は元に戻すことはできず、治療を行っても完治することはありません。
肺気腫の検査
肺気腫で行う検査は以下の2つです。
- 胸部レントゲン撮影
- 呼吸機能検査
胸部レントゲン撮影では肺気腫だけでなく、肺がんなどがないかも確認していきます。
呼吸機能検査を行う目的は以下の2つが挙げられます。
- 肺活量:空気を吸える量を調べる
- 1秒率:1秒間に吐くことができる空気の量を調べる
肺気腫は1秒率の低下が激しい病気なので、重症度を見分けるための指標になります。
重症度の分類は下記をご覧ください。
しかし軽症の人でも症状が重かったり、重症の人でも症状が軽かったりすることもあるので、あくまでも目安の数値ということになります。
また、閉塞性換気障害があると、弱く息を吐いたときの方がFEV1が大きくなることもあるため、判断が難しい場合は何度か検査を繰り返すこともあります。
肺気腫の治療
肺気腫と診断されたら、最初に行う治療は禁煙です。
タバコを長年吸っている愛煙家にとっては、精神的ダメージが大きいでしょう。
吸ってない人からはなかなか理解されませんが、急な禁煙は難しいです。
しかし、肺気腫は壊れた細胞を元に戻すことはできず、治療も困難なので、吸わないように努力しなければなりません。
長年にわたり吸っている人はとくに難しいかと思うので、少しずつ減らし、最終的には禁煙できるようにしていきましょう。
ニコチン依存症であるか知りたい人は、下記の項目に「はい」か「いいえ」で回答し、チェックしてみてください。
- 吸うと決めた本数よりも多く吸っている
- タバコが有害であると理解しても我慢することができない
- タバコが吸えない環境での付き合いを断ることがある
- タバコがない生活は考えられない
- 禁煙を試みたり、本数を減らすと眠気が出現する
- タバコの本数を減らしたり、禁煙をするとイライラしたり、気分が落ち着かない
- タバコの本数を減らしたり、禁煙をすると頭痛などの体調の変化がみられる
- タバコの本数を減らしたり、禁煙をすると食欲が増して体重が増えたことがある
- 禁煙中やタバコの本数を減らした際にタバコを吸うと楽だと感じる
- 禁煙や本数を減らすことを断念した
上記の項目に5つ該当するとニコチン依存症と診断されます。
しかし、ニコチン依存症は薬を飲んで治すことができないので、禁煙外来で下記の薬を使用しながら禁煙を目指すことも可能です。
- ニコチンパッチ:ニコチンを体内に吸収することで、イライラや集中力の低下を改善する
- チャンピックス:ニコチンが受容体に結合するのを阻害し、満足感を得られないようにする
上記の薬は身体依存(離脱症状)に対して有効な薬であるため、精神依存がある場合は心療内科とも連携していくことがあります。
肺気腫の対症療法
肺気腫は禁煙が大事であると解説しましたが、進行を加速させないようにすることはできても、加齢と共に呼吸筋が低下し、呼吸状態が悪くなっていきます。
しかし、肺気腫は完治することができない病気なので、呼吸状態を改善するために次のような気管支拡張作用のある薬を使用します。
- 抗コリン薬:スピリーバ、エクリラ、エンクラッセ
- β2刺激薬:オンブレス
ただし、抗コリン薬に関しては、隅角型緑内障や前立腺肥大症、排尿障害のある人への使用は禁忌とされています。
症状が強く出ていて早急に改善する必要がある場合は、以下のような抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤を使用することもあります。
- スピオルト
- アノーロ
- ウルティブロ
肺気腫は現在の医療では治すことができない病気です。
そのため、できる治療といえば症状を和らげるための対症療法しかありません。
症状を進行させないためには、長期的に吸入薬を継続していく必要があります。
吸入薬の効果が感じられないことを理由に自己判断で中断すれば、苦しい思いをすることになってしまうので、しっかり治療を行うようにしましょう。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年1月7日
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