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熱中症の症状・診断・治療
熱中症とは?
熱中症とは、気温の高い環境で脱水症状や体温調節の破綻を引き起こす状態です。
かつては熱射病や熱疲労、熱けいれんといった呼ばれ方をしましたが、現在は熱中症の重症度の違いとして統一されています。(日射病という言葉は使われなくなりました。)
体温が上昇して体内の水分や塩分のバランスが崩れることで、体温調節機能がうまく働かず、さまざまな症状が現れます。
重度の熱中症では命に関わることもあり、大変危険な病気になります。
熱中症の3つの原因
熱中症の原因は、「環境」「身体」「行動」によるものが考えられます。
熱中症は真夏の暑い日だけではなく、梅雨の時期から梅雨明けの時期から増加する傾向にあります。
湿度の高い曇りや雨の日や、室内にいても発症する恐れがあるので、注意しましょう。
乳幼児に多い熱中症の原因
大人の体重に占める水分の割合は60%ですが、乳幼児や新生児の体重に占める水分の割合は70%で、新生児に至っては80%とかなり多いです。
また、新生児や乳幼児は、汗腺や体温調節機能が未熟で、大人よりも脱水しやすい状況にあります。
小さなお子様がいるご家庭では、周囲の大人が注意して見守ってあげましょう。
高齢者に多い熱中症の原因
年齢を重ねるにつれ、体温調節機能が低下し、暑さや喉の渇きを感じにくくなります。
気温が高いと皮膚の表面からは知らない間に水分が蒸発し、「かくれ脱水」になりやすいので、注意が必要です。
熱中症の初期症状から重度までの症状を比較
熱中症は早期発見と早めの対応が重要ですが、熱中症の疑いがあっても、判断基準がなければいざというときの対応が難しくなります。
熱中症の症状は大きく分けて軽度・中度・重度となりますので、まずは、症状の違いをしっかりと確認しておきましょう。
熱中症の症状はわかりやすいものばかりではなく、人によって症状の出方が違います。
上記の内容を参考にしつつ、少しでも具合が悪そうであれば涼しい場所に移動し、応急処置を行いましょう。
熱中症の病態
熱中症の病態はおもに、以下の2つになります。
- 脱水・電解質喪失症状
- 体温コントロールの喪失
それぞれの熱中症のステージでの要因は以下のようになります。
- 1°(軽症):発汗していても水分ばかり摂取してナトリウム不足→筋肉の異常な収縮(熱けいれん)
- 2°(中等症):発汗と脱水で皮膚に血液を奪われて循環不全→熱疲労
- 3°(重度):高温多湿環境で熱が逃がせなくなり、体温調節機能を喪失→熱射病
覚えておきたい応急処置の基本
熱中症の基本となる応急処置は、涼しい場所に移動し、水分補給をすることです。
汗を大量にかいていたり、脱水症状の疑いがあれば、お茶や水ではなく、塩分や電解質を含んだ飲み物を飲ませてください。
ポカリスエットやアクエリアスなどのスポーツ飲料やOS-1などの経口補水液などは、効率のよい電解質と水分補給が行えます。
また、太い血管が存在する首や脇、太ももの付け根を冷やすと上昇した体温を下げることができます。
必要と感じたらすぐに救急車を
「呼びかけに応答しない」「自分で水分が補給できない」「意識がもうろうとしている」「体がけいれんして歩けない」など、重度の熱中症と判断したときは、早急に病院での処置が必要となるので、迷わず救急車を呼びましょう。
ひとつの判断方法ですが、ペットボトル飲料のフタをあえて開けずに渡して、自分で飲むことができない場合は、救急車を呼ぶ目安になります。
前項のような適切な応急処置を行いますが、自力で水分補給ができない状態であれば無理に飲ませず、救急車の到着を待ちます。
意識がしっかりしている状態で応急処置をほどこしても改善が見られないときは、自己判断せず、医療機関を受診するようにしてください。
熱中症の治療
自分で水分補給ができる場合は、経口補水液やスポーツ飲料で水分や塩分の補給を行い、安静にしますが、水分補給が困難であれば点滴を行うといった治療が基本です。
クリニックなどでは、施設にもよりますが、点滴による補液ができるくらいになります。
重度の熱中症であれば、必要に応じて気道・呼吸・循環の確保とクーリング(体温を下げること)を行う必要があります。
熱射病レベルでは集中治療室で管理となり、けいれんを抑えて熱の産生をとめるために鎮静薬、筋弛緩作用があり悪性高熱症の治療薬であるダントロレンなどが使われます。
熱中症の予防と対策
普段は健康であっても、睡眠不足が続いて疲れているときや、体調が悪いときは熱中症になりやすいので、予防や対策を行うことが大事です。
少しでも熱中症のリスクを減らせるよう、予防と対策をしっかり行いましょう。
喉が渇いてなくてもこまめな水分補給を
特に高齢の方は、暑さや渇きを感じにくいといわれています。
もともと体に保持している水分量が少ないことも重なり、知らぬ間に脱水状態になっていることもあるので、水分補給はこまめに行っていく意識が大切です。
また、氷の入った冷たすぎる飲み物は、内臓が冷えることにより、消化不良や下痢に繋がります。下痢をすると多くの水分が体内から出てしまうので、少し冷たいと感じる程度の温度が望ましいです。
たくさん汗をかいたら塩分補給も忘れずに
暑い日の激しい肉体労働やスポーツで大量の汗をかく人は、梅干しや塩飴、スポーツドリンクなどで塩分補給もしておきましょう。
しかし、すこし汗ばむ程度であれば普段の食事でまかなえるので、必要以上に塩分を摂取する必要はありません。
ペットボトル飲料ばかりを飲みすぎると、知らず知らずに高血糖になってしまうこともあります。
あくまで汗の量を目安に塩分補給を意識いただき、清涼飲料水の飲みすぎなどには注意しましょう。
この他の持病で塩分を控えるように医師からの指示が出ている場合は、主治医と相談し、暑さや疲労を主体とした対策を行ってください。
我慢せずエアコンや扇風機で暑さ対策を
ご高齢の方は忍耐強い方が多く、昨今の節電推奨の流れもうけて、真夏のうだるような暑さでもエアコンをつけずに我慢してしまうことも少なくありません。
エアコンの温度設定は28℃前後で大丈夫なので、無理せず適切な温度や湿度を保つようにしてください。
また、通気性のいい綿や麻の素材の服や給水速乾タイプの下着を身につけることで、体の熱や湿気をこもりにくくすることができます。
睡眠と休息はしっかりとりましょう
夏は活動的な季節ではありますが、その一方で体が疲れやすいと言われています。
そのため、十分な睡眠時間を確保し、しっかり休息することも大事な項目です。
夏バテで食欲が落ちることもありますが、バランスの良い食事をこころがけ、元気な体づくりをしていきましょう。
暑い日に活発な活動をするときは、休憩をはさむことも忘れないでください。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年11月9日
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