ジャカビ(一般名:ルキソリチニブリン酸塩錠)の効果と副作用

ジャカビ(一般名:ルキソリチニブリン酸塩錠)は、骨髄繊維症や真性多血症の治療薬です。

JAK阻害薬とよばれる分子標的薬で、JAK2遺伝子変異が認められる場合に効果の期待できるお薬になります。

ここでは、ジャカビの効果と副作用について、その作用の仕組みから詳しく説明します。

ジャカビとは?

ジャカビは、造血をコントロールしている酵素「ヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)」を標的とする分子標的治療薬です。

2014年7月に承認され、今までほとんど治療法がなかった骨髄繊維症の新たな選択肢になりました。

JAKには4つの種類がありますが、ジャカビは、JAK1とJAK2に強く働きます。

バイオ後続品(後発品)は、2023年現在、発売になっていません。

ジャカビの適応と効果

ジャカビの適応と効果は、以下の通りです。

ジャカビの正式適応

  • 骨髄繊維症
  • 真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)

ジャカビの効果

通常、造血幹細胞内に存在するJAKが、STAT(signal transducers and activators of transcription)というタンパク質を介したJAK-STAT経路を活性化することで、造血幹細胞の増殖・成長を調節する信号(シグナル)を細胞内に伝達しています。

このJAK-STAT経路の活性化が行き過ぎてしまうと、貧血や髄外造血による脾臓・肝臓の腫れに伴う症状などがあらわれます。

ジャカビは造血幹細胞内のJAK1とJAK2に強く結合してJAKの働きを阻害することにより、JAK-STAT経路のシグナル伝達を遮断します。

その結果、脾臓の腫れ(脾腫)を小さくします。また、最近では生存期間の延長(予後の改善)も報告されています。

ジャカビを服用される骨髄線維症の患者さんへ

適用外使用

※以下は、専門的な話になりますので、ご興味のある方のみ、お読みください・・・

日本では、がん遺伝子パネル検査実施後、患者申出療養制度のもと臨床研究が行われており、その使用対象となる医薬品の中にジャカビ錠が入っています。

つまり、JAK2遺伝子変異があり、ジャカビ錠で治療可となった場合のみ、臨床研究という形でジャカビ錠での治療が行われます。

その場合、適応外薬の費用(原則全額自費、企業から提供になっている場合は無償)と研究を適正に行うための研究費などの患者負担があります。

JAK2遺伝子変異があるがんは、婦人科がん、結節硬化型ホジキンリンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がんなどが知られています。

ジャカビの用法

ジャカビの用法は、以下のようになっています。

  • 骨髄線維症:1回5mg~25mg1日2回、12時間毎を目安に経口投与
  • 真性多血症:1回10mg1日2回を開始用量、12時間毎を目安に経口投与(最大1回25mg1日2回)

ジャカビの添付文書

ジャカビ錠 5 mg,ジャカビ錠 10 mg に係る医薬品リスク管理計画書

適正使用に関するQ&Aと臨床試験成績

ジャカビの副作用

ジャカビで頻度が高い副作用は、

  • 骨髄抑制
  • 感染症
  • 肝機能障害
  • 体重増加
  • 下痢
  • 疲労

です。

投与開始後半年までに、多くの副作用が発現します。

感染症が多く発現するのは、免疫抑制が起こるためです。

主な副作用と頻度

日本人と外国人、骨髄線維症と真性多血症でジャカビの副作用の発現に大きな違いはありません。

副作用と思われる症状が現れたら、すぐに主治医に相談してください。

比較的よく起きる副作用(頻度5%以上)は以下の通りです。

  • 骨髄抑制(貧血・血小板減少)
  • 肝機能障害
  • 体重増加
  • 下痢
  • 疲労

※手足に点状の出血、あおあざができやすい、突然の高熱などは骨髄抑制、体がだるい、食欲がないなどは肝機能障害の可能性のある症状です。

良く起きる副作用(頻度1~5%未満)は以下の通りです。

  • 出血性事象(挫傷、鼻出血、胃腸出血、血尿など)
  • 帯状疱疹
  • 尿路感染

稀にしか起きないけれども関連性が認められている副作用は以下の通りです。

  • 結核
  • 間質性肺炎
  • 心不全

※息切れ・息苦しいは間質性肺炎、動くと息苦しい、疲れやすいは心不全の可能性のある症状です。

ジャカビを服用される骨髄線維症の患者さんへ

ジャカビを服用される真性多血症の患者さんへ

※通常の抗がん剤で報告の多い脱毛は、ジャカビでは報告が少ないです(1,411例中3件)。

ジャカビ特定使用成績調査(骨髄線維症)の中間集計結果

ジャカビ特定使用成績調査(真性多血症)の中間集計結果

副作用発現時期

骨髄抑制は投与後3か月に特に多く発現しますが、減量、休薬、輸血などによりコントロール可能なので、主治医の指示に従ってください。

ジャカビ錠の薬理学的特徴と臨床成績

投与開始後半年までに多くの副作用が発現するので、投与開始から半年間は副作用の発現に注意してください。

投与期間が長くなっても副作用の増加傾向はありませんが、投与開始後半年間以降に発現する副作用は貧血などです。

ジャカビ特定使用成績調査(骨髄線維症)の中間集計結果

ジャカビ特定使用成績調査(真性多血症)の中間集計結果

妊娠と授乳

動物実験で胎児毒性が認められたとの報告があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性は服用禁止となっています。

また妊娠可能な女性は、投与期間及び投与終了後一定期間は適切な方法で避妊しましょう。

動物実験で本剤及び代謝物が母乳移行し、母体血漿中濃度の13倍であったとの報告があるので、授乳も避けた方がよいでしょう。

ジャカビの添付文書

ジャカビの薬価

ジャカビの薬価は、以下の通りです。(2022年12月現在)

  • 先発品(ジャカビ)5mg:3768.9円、10mg:7513.2円

バイオ後続品(後発品)は未販売です。

 

薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和4年12月9日適用)

1回10mgだとすると、月約13.5万円です(「高額療養費制度」などの適用で支払額とは異なります)。

【まとめ】

  • ジャカビは骨髄繊維症や真性多血症の治療薬です。
  • ジャカビは造血幹細胞内のJAK1とJAK2に強く結合して、JAKの働きを阻害することにより、効果を現します。
  • ジャカビで良く起こる副作用は、骨髄抑制、肝機能障害、体重増加、下痢、疲労です。
  • 先発品ジャガビ5mg錠の薬価は、3768.9円です。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年3月17日

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