ノロウイルス(冬の急性胃腸炎)の症状・診断・治療

ノロウィルスとは

ノロウイルスは、経口感染することにより、激しい嘔吐や下痢などの胃腸炎症状を引き起こします

冬場の感染性胃腸炎の要因として最も多く、感染力が非常に強いウイルスです。

この時期の感染性胃腸炎は6〜7割がノロウィルスです。

ノロウイルスの流行時期を図でご説明します。

主な感染源である牡蠣の消費量が増えることや、新年会や忘年会などのイベントなどが感染拡大の要因となっています。

ノロウイルスの原因

ノロウイルスの主な原因は、生で食べる機会が多い牡蠣です。

シジミやホタテの方が、ノロウイルスの検出率は高いと報告されていますが、牡蠣のように丸ごと食べることはありません。

そのため、牡蠣に関しては、他の海産物よりも厳しい基準が設けられています

生食用の牡蠣の基準をイラストでご説明します。

これだけ厳しい基準が設けられているにも関わらず、「生食用の牡蠣12.9%」「加熱加工用の牡蠣24.4%」のノロウイルスが検出されています。

ノロウイルスの症状

ノロウイルスに感染しても、すぐに症状が出るというわけではありません

症状が出始めるのは、ノロウイルスが腸で感染し、体内で免疫がウイルスを排除しようとしたときに症状が認められます。

特に前兆があるわけではなく、急に激しい嘔吐と下痢が襲ってきます

このような症状が冬場に起こったら、ノロウイルスと疑った方がよいでしょう。

ノロウイルスは、腸で増殖するウイルスなので、下記のような胃腸症状が現れます。

ノロウイルスの主な症状をご紹介します。

これらの症状は、感染から1〜2日後に出現します。

体内に侵入したウイルスを排除するため、1〜2日ほど胃腸症状が続き、ウイルスを出し切ってしまえば自然に回復します。

しかし、ノロウイルスに感染した約1割ぐらいの人は、風邪と似た軽い症状であったり、無症状であったという報告もありました。

流行時期はしっかり手を洗い、予防しましょう。

2006年〜2009年に発生した99のノロウイルス食中毒に関する、内閣府研究班が調査したデータは下記をご確認ください。

ノロウイルス感染症の症状の期間を表でご説明します。

ノロウイルスの症状は数日で収まりますが、1〜2週間は便からウイルスを排出し続けます

そのため、症状が治まったとしても、周囲に移さないように配慮が必要です。

ノロウイルスの潜伏期間と感染経路

ノロウイルスの潜伏期間は、24〜48時間です。

ノロウイルスの感染経路をご説明します。

ノロウイルスは基本的に空気感染は起こしませんが、条件が当てはまった場合のみ、空気感染(飛沫核感染・粉塵感染)が疑われることもあります。

ノロウイルスの検査と診断

ノロウイルスは「ノロウイルス抗原検査」で検査することは可能ですが、健康な方がこの検査を受ける場合、保険適用外となります。

ノロウイルスに治療薬はなく、自然治癒するため、検査を行う必要性がないからです。

ただし、下記に当てはまる方は、ノロウイルスであるか調べる必要があるので、保険が適用されます。

  • 3歳未満の方
  • 65歳以上の方
  • 悪性腫瘍の診断を受けている方
  • 臓器移植後の方
  • 免疫抑制・抗悪性腫瘍剤・免疫抑制効果のあるお薬を服用中の方

このように、重症化リスクがある方に限り検査を行っていきます。

ノロウイルス検査キットの使用方法は、肛門を綿棒でこするか便の液体を採取し、検査キットにたらします

結果が出るまでの時間は約15分ほどです。

ノロウイルスの検査費用は、健康な方は自己負担となるため、3,000円~5,000円程度になります。

ノロウイルスの診断は、下痢や嘔吐などの症状や食事の状況などをふまえて診断を行っていきます。

ノロウィルスの治療

体の免疫でウイルスを撃退し、下痢や嘔吐で菌を出すことで、自然に回復するのがノロウイルスの治療です。

そのため、抗ウイルス薬などはなく、治療を行うとすれば、対症療法が中心になります。

下痢や嘔吐で、出せるものは出してしまった方が回復は早いです。

対症療法として行う治療は、下痢の症状や期間を軽くするため整腸剤の処方を行います。

ですが、下記に当てはまる方は、下痢や嘔吐で脱水症状になりやすく、点滴で治療していきます。

  • 高齢の方
  • 小さなお子様
  • 持病があり、体力が低下している方
  • 免疫力が低下する持病がある方

ノロウイルスは非常に感染力が強いため、感染対策が万全でなければ対応が難しくなります。

自宅での治療が困難な場合は、病院に相談しましょう。

ノロウイルスの感染対策

ノロウイルスは感染力が強いので、しっかり感染対策を行いましょう。

ノロウイルスの感染対策をご説明します。

ノロウイルス感染の原因となる牡蠣は、しっかり加熱しましょう。

ノロウイルス対策としての貝の加熱方法をご紹介します。

手洗いは以下を参考に行ってください。

ノロウイルス対策での手洗い方法についてご説明します。

嘔吐物の処理方法

ノロウイルスの感染対策用に、必要な物が一式が揃っている「嘔吐キット」というものがオススメです。

手順は下記よりご確認ください。

ノロウイルスを意識した嘔吐物の処理方法をお伝えしていきます。

高級なカーペットなどに嘔吐してしまい、塩素系の薬剤が使用できない場合は、スチームアイロンを2分間行うことで、消毒液の代用ができます。

ノロウイルスはアルコール消毒が効かないのはなぜ?

多くのウイルスは、増殖すると新しい感染先を見つけるために、細胞の膜を破って出ていきます。

その際に包まれる、脂質にとんだ細胞膜をエンベロープと呼びます。

しかし、ノロウイルスはこのエンベロープを持っていません。

脂質を溶かし、ウイルスを排除するアルコールでは、ノロウイルスを排除することができないのです。

ノロウイルスに効果的な消毒薬は?

ノロウイルスの消毒には塩素系の消毒薬を使います。

二酸化塩素は費用が高いので、希釈する必要はありますが、次亜塩素酸ナトリウムを使用するのが一般的です。

これらは人の手に使用することはできませんが、飲食店などではノロウィルス対策として、人の手に使用できるように改良された消毒薬を使用しています。

塩素系の消毒薬を使用する際は、カーペットなどに使用すると色落ちしてしまうので、注意してください。

【ノロウイルスについてさらに詳しく知りたい方へ】

ノロウイルスについて(元住吉院HP)

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年11月24日

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