悪性リンパ腫の症状・診断・治療

悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫は血液がんの一種で、白血球の仲間であるリンパ球が異常増殖(=がん化)する病気です。

異常増殖するリンパ球を腫瘍細胞といいますが、悪性リンパ腫ではこの腫瘍細胞がリンパ節などで増殖し腫瘤を形成します。

WHOの分類では悪性リンパ腫は70以上の病型に分類されますが、このように多くの病型が存在するのはリンパ球の分化過程のどの段階でがん化したかということが理由に挙げられるからです。

全ての血球は造血幹細胞という細胞から造り出されますが、白血球の一種であるリンパ球はさらにNK(ナチュラルキラー)細胞、T細胞、B細胞、形質細胞に分かれていきます。

血球の分化については『血液はどのように造られているの?血液のしくみと造血幹細胞』のページに詳しく説明しています。

悪性リンパ腫では、腫瘍細胞がどの細胞由来であるかという点からBリンパ球由来のB細胞性、Tリンパ球由来のT細胞性とNK細胞性などに細かく分類されるために、このように多数の病型が存在することになります。

それぞれの病型によって病気の進み具合(病勢)が、年単位で進行する/週から月単位で進行する/日から週単位で進行するなどと異なります。

そのため病勢によっては、経過観察~入院を必要とする強力な治療が必要になるなど、治療法の選択にも大きく影響します。

原因と特徴

また後述しますが、腫瘍細胞の広がりの程度を表す病期(ステージ)による分類もあります。

悪性リンパ腫の治療においては、病型・病勢・病期によって治療方針が異なるので、正確に診断をつけることが重要になります。

悪性リンパ腫が発症する原因は、遺伝子変異による可能性が高いと考えられています。

遺伝子変異を引き起こす要因には、

  • 感染性要因:EBウイルス、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、C型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、HIVウイルスなど
  • 化学・物理学的要因:化学療法、放射線療法
  • 免疫不全状態:先天性/後天性の免疫不全症候群、免疫抑制剤投与中の臓器移植患者、自己免疫疾患

などがありますが、詳しいメカニズムはまだ明らかになっていません。

悪性リンパ腫は日本で一番多い血液のがんで、2019年には年間36000人以上の罹患数となり年々増加傾向にあります。

60~70歳代が発症のピークとなります。

日本人では欧米に比べてホジキンリンパ腫が少なく、非ホジキンリンパ腫の中でも濾胞性リンパ腫が少なく、予後の良くないTリンパ腫が多いという特徴があり、残念ながら欧米に比べて治療成績がよくありません。

悪性リンパ腫の症状と予後

悪性リンパ腫の症状には大きく以下の2つがあります。

  • 腫瘍細胞の異常増殖によるリンパ節の腫れ(=腫瘤)
  • 腫瘍細胞から産生される物質(サイトカイン)による全身症状

リンパ節の腫れでは、頸部の無痛性リンパ節腫脹から気づかれることが多いです。そのほか、わきの下、足の付け根、腹部、骨盤部分などリンパ節の多い部分が腫れます。

悪性リンパ腫の腫瘤の特徴としては、

  • 2㎝以上
  • 硬さは、弾性軟~硬
  • 痛みや熱感・発赤を伴わない
  • 可動性がある

などがあります。

基本的に痛みは伴いませんが、腫瘤のできた部位によっては大きくなった腫瘤が周辺の臓器を圧迫することによる痛みが出現したり、痛み以外にも様々な症状を起こします。

また、腫瘍細胞から産生される物質(サイトカイン)による全身症状では、

  • 発熱:38℃以上の原因不明の発熱
  • 体重減少:6か月で10%以上の原因不明の体重減少
  • 盗汗:寝具を変えなければいけないほどの発汗

などが見られます。

これらの症状はB症状と呼ばれています。

そもそも悪性リンパ腫は、病原体から身体を守る免疫系細胞であるリンパ球系から発生します。

そのためリンパ球系が異常増殖することで病原体と戦う際に分泌されるサイトカインという物質が増加し、全身が炎症状態に陥ります。

このような機序から、B症状が認められるということになります。

悪性リンパ腫の予後とは?

悪性リンパ腫の予後は、分類された病型・病勢・病期によって異なります。

分類の詳細は後述しますが、病期で分類すれば限局期であるⅠ~Ⅱ期の5年生存率は70~90%、進行期であるⅢ~Ⅳ期では40~60%となります。

病気の勢いである病勢で分類すれば、無治療の場合の予後は低悪性度では年単位、中悪性度では月単位、高悪性度では週単位とされています。

悪性リンパ腫の診断と分類

日本血液学会の造血腫瘍ガイドラインでは、診断・治療方針に必要な事項として

  • 病歴:既往歴、治療中の疾患、合併症、初発症状、症状出現の時期、全身症状(B症状の有無)など
  • 身体所見:腫大リンパ節の有無(個数・サイズ・性状(硬さ、可動性の有無など)、触知可能な肝腫大・脾腫大の有無、貧血・黄疸の有無、皮疹の有無、浮腫の有無など
  • 一般検査:血液検査)、ウイルス検査、尿検査、画像・その他の検査
  • 病理組織診断:リンパ節生検による病理組織診断
  • そのほかの検査

が挙げられています。

悪性リンパ腫の活動度の評価は、CRP、LDHが上昇しているかどうかで判断していきます。

リンパ球のT細胞機能を反映する可溶性IL-2レセプターの上昇も、リンパ腫のタイプによっては活動度の指標となります。

確定診断は、リンパ節生検を行っていきます。

これらの所見やデータを基にして、①~③の流れで診断・治療と進んでいきます。

悪性リンパ腫の診断の流れをご紹介します。

悪性リンパ腫の分類

悪性リンパ腫の分類には、WHO分類(2017)が広く用いられています。

このWHO分類では悪性リンパ腫を「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の大きく2つのタイプに分類

悪性リンパ腫はこのように多くの病型が存在するので、治療においては悪性リンパ腫を病期の進み具合(病勢)で分類した臨床分類という分類方法も広く用いられています。

臨床分類では、

  • 年単位で進行する:低悪性度
  • 週から月単位で進行する:中悪性度
  • 日から週単位で進行する:高悪性度

の大きく3つに分類されます。

悪性リンパ腫のタイプ診断の大枠を図でご説明します。

非ホジキンリンパ腫をWHO分類での病型を臨床分類に対応させると、以下の様に分類できます。

悪性リンパ腫の分類と悪性度を一覧にまとめました。

ホジキンリンパ腫と病期分類

ホジキンリンパ腫とは、ホジキン細胞やリードステルンベルグ細胞と呼ばれる特徴的な細胞がみられる悪性リンパ腫です。

頸部のリンパ節腫脹(無痛性リンパ節腫脹)から気づかれることが多く、日本では悪性リンパ腫の5%程度になります。

治療方針は、病期分類(Ann arbor分類)によってきめられます。

  • Ⅰ期:1つのリンパ節領域のみ
  • Ⅱ期:上半身か下半身のみで、2つのリンパ節領域
  • Ⅲ期:上半身と下半身の両方のリンパ節領域
  • Ⅳ期:臓器浸潤、肝臓や骨髄に広がっている

Ⅰ期でも、B症状がある場合はⅠB期、ない場合はⅠA期となります。

染色体異常のあるリンパ腫

一部のリンパ腫には、染色体異常が認められます。

  • 濾胞性リンパ腫:t(14;18)(q32;q21)
  • マントル細胞リンパ腫:t(11;14)(q13;q32)
  • バーキットリンパ腫t(8;14)(q24;q32)

悪性リンパ腫の治療法

悪性リンパ腫の治療では、リンパ腫の病型・病勢・病期・予後予測の結果などから治療法が選択されるため、それらの診断を正確に行うことがとても重要になります。

治療法は大きく3つあります。

  • 化学療法
  • 放射線療法
  • 造血幹細胞移植

化学療法とは?

抗がん剤や分子標的薬を用いて腫瘍細胞の増殖を抑制、または死滅させる治療法のことです。

抗がん剤は腫瘍細胞と同時に正常な細胞も攻撃するので、副作用を伴います。

分子標的薬は腫瘍細胞のみを標的として作用するので、抗がん剤と比較して副作用は少ないと言われていますが、分子標的薬特有の副作用が出現することがわかってきました。

リンパ腫の種類によって、治療に用いられる薬剤の種類や組み合わせは異なります。

そのため、診断を正確に行うことが重要になってきます。

放射線療法とは?

放射線をリンパ腫の病巣に照射し、腫瘍細胞を攻撃する治療となります。

放射線も正常な細胞を攻撃するため副作用が出現し、副作用は照射された部位によって異なる症状が出現します。

また、放射線療法は造血幹細胞移植前に行われる場合もあります。

移植前に腫瘍細胞や血液細胞(主に免疫担当細胞)の根絶を図る目的で行われます。

造血幹細胞移植とは?

自分が持っている造血幹細胞とドナーの造血幹細胞を総入れ替えする治療法です。

造血幹細胞を入れ替えることで、新たな造血幹細胞によって造血機能の正常化を図り血液産生の回復を促進します。

また、ドナーから移植された細胞が造血幹細胞移植前に化学療法や放射線療法などで減らした腫瘍細胞を攻撃する作用が期待されます。

ホジキンリンパ腫の重症度別の治療方針

病期分類にしたがって治療方針がきまってきます。

ⅠA・ⅡA期の治療法

巨大腫瘤がない場合は、放射線治療と化学療法を行っていきます。

放射線治療を行う場合でも、再発率を低下させるために化学療法を行うことが多いです。

化学療法としては、ABVD療法(アドリアマイシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)を行うことが一般的です。

  • A:ドキソルビジン(商品名:アドリアマイシン)
  • B:ブレオマイシン(商品名:ブレオ)
  • V:ビンブラスチン(商品名:エクザール)
  • D:ダカルバジン(商品名:ダカルバジン)

それ以外の治療法

化学療法が主体となります。

非ホジキンリンパ腫の重症度別の治療方針

上述した病期分類と悪性度によって治療方針が異なってきます。

低悪性度リンパ腫の治療法

低悪性度では病気の進行が年単位となるため、腫瘍量が少なければ経過観察となる場合もあります。

Ⅰ期や巨大脾腫がないⅡ期では、放射線治療を行っていきます。

それ以外の場合は、CHOP療法(シクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン)を行っていきます。

CD20陽性のB細胞系悪性リンパ腫であれば、モノクローナル抗体のリツキシマブが有効なため、R-CHOP療法がおこなわれます。

  • R:リツキシマブ(商品名:リツキサン)
  • C:エンドキサン(商品名:シクロホスファミド)
  • H:ドキソルビジン/ハイドロキシダウノルビシン(商品名:アドリアシン/ドキシル)
  • O:ビンクリスチン(商品名:オンコビン)
  • P:プレドニゾロン(商品名:プレドニン)

中悪性度リンパ腫の治療法

中悪性度では病気の進行が週~月単位となるため、診察された時点で治療が必要となります。

治療としては、化学療法のみ、または化学療法と放射線療法の併用治療が行われます。

巨大腫瘤がある場合は、腫瘍量を減少させるために放射線治療から行っていきます。

高悪性度リンパ腫の治療法

高悪性度では病気の進行が日~週単位で進行するため、入院を要する強力な治療が必要となります。

治療としては、化学療法が行われます。

急性リンパ性白血病に準じた強力な化学療法を行い、造血幹細胞移植も検討します。

カテゴリー:こころみ医学|2022年11月24日