ビダーザ(一般名:アザシチジン)の効果と副作用
ビダーザ(一般名:アザシチジン)は、骨髄異形成症候群などの血液の腫瘍に使用される治療薬です。
血液腫瘍治療薬の中でも代謝拮抗薬に分類され、腫瘍細胞のタンパク質合成を抑える働きを持ちます。
今回は、ビダーザの効果や副作用について詳しく解説していきます。
ビダーザとは?
ビダーザ(一般名:アザシチジン)は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)・急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)で使用される血液腫瘍の治療薬です。
1964年に核酸合成阻害剤として化学合成、1980年代より骨髄異形成症候群の治療薬として注目されており、血液腫瘍の治療薬としては歴史のある薬剤として知られています。
骨髄異形成症候群で推奨されている唯一の注射薬として、現在でも治療に使われています。
ビダーザの適応
ビダーザ(一般名:アザシチジン)の適応として、以下が認められています。
- 骨髄異形成症候群
- 急性骨髄性白血病
ビダーザの効果
ビダーザ(一般名:アザシチジン)は、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病の原因となる腫瘍細胞の増殖を抑える作用を持ちます。
ビダーザが投与されると、細胞内のDNAやRNAに取り込まれ、細胞増殖に必要不可欠なタンパク質の合成を妨げます。
また、ビダーザは骨髄異形成症候群において「CDKN2B」と呼ばれる遺伝子にも関わっているとの報告があります。
「CDKN2B」は、人の体内に備わっている「がん抑制遺伝子」のひとつです。
ビダーザは、骨髄異形成症候群に対して様々な作用で効果を発揮します。
ビダーザの用法
ビダーザ(一般名:アザシチジン)の用法は、以下の通りです。
- 投与量
75mg/m2(体表面積) - 投与方法
皮下投与または点滴静注(10分間) - 投与スケジュール
1日1回・7日間投与の後、3週間休薬
これを1サイクルとし、投与を繰り返す
ビダーザの投与時間は10分間と他の抗がん剤と比べて短時間で終了しますが、7日間連続して投与する必要があります。
入院をしない場合は1週間病院に通い続けなくてはならないため、スケジュール面において負担に感じられる方も多いでしょう。
ご自身で病院に通えるタイミングを主治医とも相談しながら、治療を進めていく必要があります。
ビダーザの副作用
ビダーザの副作用として、特に高い頻度で見られる症状が「骨髄抑制」です。骨髄抑制とは、体内の血球成分を作る骨髄の働きが抑えられてしまう状態です。
血球成分である白血球・好中球・血小板などの数が減ってしまい、感染症にかかる・あざができやすくなる等の自覚症状につながります。
特に、ビダーザ投与においては「好中球減少症」の頻度が高く見られています。好中球は、ご自身の体を細菌・ウイルス等から守る「体内の救急車」のような存在です。
ビダーザ投与中は好中球数の減少が見られやすいため、感染症にかからないよう手洗い・うがいなどを徹底しましょう。
また、ビダーザは骨髄抑制の度合いにより投与の延期・減量をするよう定められています。
診察時の検査で白血球数・好中球数・血小板数を確認し、その後の治療方法を検討します。
採血検査は「病状が進行していないか」の指標にもなりますが、「ビダーザの副作用が出ていないか」の確認も兼ねる重要な検査でもあるのです。
主な副作用と頻度
ビダーザによる副作用の頻度は以下の通りです。
- 骨髄抑制
好中球減少症(発熱性好中球減少症を含む):49.5%
血小板減少症:32.6%
白血球減少症:20.0%
貧血 :13.7% - 感染症
肺炎 :11.7% - 心障害
心房細動:1.3%
心不全 :0.9% - 肝機能障害、黄疸
ALT 増加:5.2%
AST 増加:4.8%
ALP 増加:3.5%
血中ビリルビン増加:4.2% - 低血圧
低血圧 :1.5%
参考:国内第I/II試験(NS17-P1/2 試験)53 例、AML 患者対象の国内第II相試験(NS17A-P2 試験)30 例、海外第III相試験(AZA-AML-001 試験)236 例 及び国際共同第III相比較試験(M15-656 試験)427 例 の結果を元に集計
妊娠と授乳
妊娠中のビダーザ投与は、非臨床試験(マウス・ラットに対する試験)において胎児の死亡・奇形が報告されているため禁止されています。
授乳についても、ビダーザが乳汁に移行する可能性があるため、投与中は避けた方が望ましいとされています。
ビダーザの薬価
ビダーザの薬価は以下の通りです。 ※2023年5月現在
- 先発品(ビダーザ注射用100mg) :38,749円
- 後発品(アザシチジン注射用100mg):15,425円
まとめ
- ビダーザ(一般名:アザシチジン)は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)・急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の治療薬です。
- ビダーザは、腫瘍細胞のタンパク質合成を妨げる代謝拮抗薬です。
- ビダーザにおいて、高頻度で起こる副作用に「骨髄抑制」があげられます。
- ビダーザの薬価は、100mgあたり先発品が38,749円、後発品が15,425円と非常に高額です。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年6月1日
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