ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)の効果と副作用
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ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)は、真性多血症(Polycythemia Vera:PV)の治療に使われる皮下注射の薬です。
今回はベスレミの効果や副作用について解説します。
ベスレミとは?
ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)とは、インターフェロン製剤に分類される真性多血症の治療薬です。
2023年6月に新たな皮下注射薬として登場しました。
ベスレミの適応
ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)の適応として、以下が認められています。
- 真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)
真性多血症(Polycythemia Vera:PV)は、血液を作る造血幹細胞の増殖で血液細胞(赤血球・血小板・白血球など)の数が過剰に増加してしまう疾患です。
過剰に増加した血液細胞は正常な機能を持ち合わせていますが、数が多すぎるあまりに血液の粘性が強くなり血管内を通過しにくくしてしまいます。
そのため、真性多血症の治療は「血栓症予防」を主眼とし、血液をサラサラにする抗血栓薬を用いた「低用量アスピリン療法」や血液細胞を減らす「細胞減少療法」を行います。
ベスレミは、真性多血症の治療における「細胞減少療法」を目的に使用される薬剤です。
ベスレミの効果
ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)の真正多血症に対する効果発現の明確な機序は明らかになっていません。
現時点では、以下の流れで腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。
- 1型IFN(インターフェロン)受容体に結合
- JAK(ヤヌスキナーゼ)1・TYK(チロシンキナーゼ)2を活性化、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を増加
- IFN誘導遺伝子の発現を増加
- 細胞周期の停止およびアポトーシス誘導を引き起こす
ベスレミの用法
ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)の用法は、以下の通りです。
- 開始用量:1回100μg(他の細胞減少療法薬を投与中の場合は50μg)
- 投与頻度:2週に1回
- 投与方法:皮下投与
※患者の状態により適宜増減するが、増量は50μgずつ行い、1回500μgは超えない
別の細胞減少療法薬を使用している場合は、通常の半分の用量で治療を開始します。
真性多血症の治療に使われる細胞減少療法薬は「ハイドレア」「ジャカビ」などが該当します。
ベスレミの副作用
ベスレミによる副作用で現れやすい症状が「疲労」「発熱」「下痢」です。これらの症状が現れたら、なるべく早めに主治医へ相談をしましょう。
特に「下痢」を起こしている時は、脱水症状になりうる可能性もありますので水分補給を心がけてください。
また、インターフェロン製剤にあたるベスレミは、漢方薬の「小柴胡湯」との併用を禁止しています。
これは、インターフェロン製剤と小柴胡湯の併用例による間質性肺炎が多く報告されているためです。
小柴胡湯は「こじれた風邪」「食欲不振」などの効能で市販薬としても販売されています。ご自身の判断で小柴胡湯を内服しないよう、十分に注意してください。
主な副作用と頻度
ベスレミの副作用頻度は、以下の通りです。
- 疲 労 :11.5%
- インフルエンザ様疾患:9.6%
- 発 熱 :6.4%
- γ-GTP上昇:9.6%
- 下 痢 :5.8%
- 脱毛症 :14.1%
- そう痒症:6.4%
- 筋肉痛 :8.3%
- 関節痛 :6.4%
- 尿中β2ミクログロブリン増加:20.7%
参考:国内第II相試験(A19-201試験)・海外第III相試験(PROUD-PV試験)の結果に基づき算出
妊娠
妊娠中や妊娠の可能性がある女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみにベスレミを使用するよう注意喚起されています。
ベスレミの非臨床試験(カニクイザルに対する試験)において、流産・胚の死亡が認められたと報告されているためです。
ベスレミ投与中・投与を終えてから一定の期間は、適切な避妊法を行うことが求められます。
授乳
ベスレミ投与中は「治療の有益性・母乳栄養の有益性を考慮した上で授乳の継続・中止を検討すること」とされています。
ベスレミと同分類であるインターフェロン製剤(ペグインターフェロンα-2a製剤)において、非臨床試験(ラットに対する試験)での乳汁中移行が認められているためです。
ベスレミの薬価
ベスレミの薬価は以下の通りです。※2023年6月現在
- 先発品(ベスレミ注):250μgシリンジ・297,259円、500μgシリンジ・ 565,154円
- 後発品:未発売
まとめ
- ベスレミ(一般名:ロペグインターフェロンα-2b)は真性多血症の治療に使用される注射薬です。
- 「インターフェロン製剤」であり、真性多血症の治療における「細胞減少療法」を目的に使用されます。
- ベスレミの副作用として高い頻度で見られる症状が「疲労」「発熱」「下痢」です。
- ベスレミと小柴胡湯の併用は禁忌です。
- ベスレミの薬価は、250μgシリンジが297,259円、500μgシリンジが565,154円です。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年10月17日
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