キャッスルマン病の治療
キャッスルマン病の治療は、単中心性か多中心性かによって治療が大きく異なります。
単中心性キャッスルマン病の治療
通常、外科的手術が治療の第一選択になります。手術によって腫れたリンパ節を切除することで治療されます。
外科切除後に再発した場合や病変が切除困難な場所にある場合は、放射線療法で腫れたリンパ節の縮小を期待します。
多中心性キャッスルマン病の治療
多中心性の場合、病型や症状の重症度に応じて治療法は個別に決定されます。
症状がない、または、症状が軽微な場合には経過観察となります。
しかし、症状があって治療を開始されることになっても根治治療があるわけではなく、基本的には対症療法が治療の中心となります。
対症療法では、免疫抑制薬や炎症抑制薬の使用が考慮され、一部の患者には化学療法や放射線療法も検討されることがあります。
また、HHV-8に対する抗ウイルス薬の使用も一部の患者に効果があるとされています。
治療が開始されるとその治療を生涯にわたって続けることになります。
病型については先の分類の頁で説明しました。重症度については、下記の基準によって判別します。
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重症 |
中等症 |
軽症 |
炎症性貧血 |
Hb<7g/dL または 赤血球輸血依存性 |
7g/dL≦Hb<8g/dL |
左記のいずれも該当なし |
血小板減少 |
血小板輸血不応 または 血小板輸血依存性 |
血小板数<2万/μL |
低Alb血症 |
Alb<1.5g/dL |
1.5≦Alb<2.0 |
腎機能障害 |
GFR<15ml/分/1.73㎡ またはネフローゼ症候群 |
CKD重症度分類 ヒートマップで赤の部分 |
肺病変 |
間質性肺陰影+ かつ 安静時酸素吸入を要する
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間質性肺陰影+ かつ 軽い労作で呼吸困難 |
胸腹水 |
ドレナージを要する |
画像上明らか |
心不全 |
EF<40% または NYHAⅣ度 |
40%≦EF<50% または NYHAⅢ度 |
アミロイドーシス |
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組織学的に証明された二次性 アミロイドーシスによる臓器障害あり |
【HHV-8関連MCDの治療】
治療の主な目標は、HHV-8の増殖を抑制することになります。抗がん剤・抗ウイルス薬・分子標的薬・抗HIV薬を組み合わせた3剤を用いた治療を行います。
- ジドブジシン(AZT)+バルガンシクロビル+リツキシマブ
- リツキシマブ+塩酸ドキソルビシン+抗HIV薬
寛解後の維持療法としてはインターフェロンまたは、高容量AZTが用いられます
【iMCDの治療】
インターロイキン-6(IL-6)遮断薬や免疫抑制剤を用いた治療が行われますが、症状の重症度や個々の症例に応じて治療のアプローチが異なります。
※IL-6遮断薬であるトシリズマブやサリツマブは、炎症性サイトカインの過剰な放出を抑制し、症状の改善や疾患の進行抑制を目的としています。
※免疫抑制剤であるステロイドやシクロスポリン、タクロリムスなどの薬剤は、免疫系の異常を抑制することで症状の軽減や疾患の進行抑制を目的としています。
軽度の場合
免疫抑制療法で症状の緩和を図り、症状が改善すれば徐々に減量をしていきます。
免疫抑制療法を長期間行う場合は、糖尿病や骨粗しょう症、感染症に注意が必要となります。
中等度以上の場合
炎症所見が強く、臓器に重篤な障害を有する場合は、免疫抑制療法と併用してトシリズマブ(Il-6遮断薬)を用いた治療が検討されます。
トシリズマブ(商品名:アクテムラ)は、MCDに関する臨床試験において国内で唯一有効性が確認できている薬剤で、保険収載されています。
トシリズマブを使用し始めると、全身で見られていた様々な炎症症状や検査異常値が改善されます。
そのため、新たに感染症に罹患しても炎症所見が検査値として反映されなくなります。
キャッスルマン病自体が全身に炎症を生じさせる疾患となるので、そこに感染症が加わると急速に敗血症や多臓器不全へと進行する可能性があるので、感染症を見逃さないように十分に観察することが必要となります。
【POEMS関連MCD】
POEMS関連MCDではiMCDの症状に加えて、さらにさまざまな症状や合併症が存在します。
そのためPOEMS関連MCDでは、中等度以上のiMCDの治療に加えて抗がん剤療法・放射線療法・対症療法が行われます。
抗がん剤は、メルファランやレナリドミドを使用し、腫瘍細胞の成長を抑制し、症状の改善や疾患の進行抑制を期待します。
同時に疼痛管理、神経障害の治療、内分泌異常の補正、血液異常の管理など、それぞれの症状・所見に応じた対症療法が行われます。