フェロ・グラデュメットは、鉄欠乏性貧血の治療に対して使われる経口鉄剤です。経口鉄剤の中でも徐放性の薬であり、消化管の中でゆっくりと硫酸鉄が放出されます。
今回は、フェロ・グラデュメットの効果や副作用について解説します。
フェロ・グラデュメットとは?
フェロ・グラデュメットは、経口鉄剤の中でも徐放錠に分類される薬剤です。
鉄欠乏性貧血に対する内服薬として使われる経口鉄剤ですが、消化器への刺激から吐き気・腹痛などの副作用が欠点とされてきました。
これらの副作用を軽減するため、現在、処方薬として使われている経口鉄剤には様々な工夫がされています。
その中でも特徴的な工夫をされているのが、徐放錠であるフェロ・グラデュメットです。
フェロ・グラデュメットは小さなプラスチック格子の隙間に硫酸鉄を含ませている錠剤で、消化器内では徐々に時間をかけて硫酸鉄を放出します。
ゆっくりと硫酸鉄を放出させて、胃粘膜に対する刺激を少なくしながら、効率的に鉄を吸収させます。
フェロ・グラデュメット の適応
フェロ・グラデュメット(一般名:乾燥硫酸鉄)の適応として、以下が認められています。
フェロ・グラデュメット の効果
フェロ・グラデュメットが内服されると、消化管の中で徐々に硫酸鉄が放出され、少しずつ体内に吸収されます。
吸収された鉄は、血液中の鉄を運ぶ「血漿トランスフェリン」と結合し、骨髄などの体内臓器へ運ばれます。
骨髄に運ばれた鉄は、ヘモグロビンを作る材料として使われ、鉄欠乏性貧血の改善に携わります。
フェロ・グラデュメット の用法
フェロ・グラデュメット (一般名:乾燥硫酸鉄)の用法は、以下の通りです。
- 用法:1日1~2回、空腹時に内服(副作用が強い場合は食事直後に内服)
- 用量:1日105~210㎎(1~2錠)
フェロ・グラデュメットは、網目状のケース(プラスチック格子)に硫酸鉄がしまってある形をしています。
そのため、飲み込む前に噛み砕いてしまうと、ケースが壊れ硫酸鉄が中から出てきてしまいます。形が崩れてしまうと、効果不十分・消化器への副作用増強が考えられますので、必ず錠剤のまま飲み込みましょう。
フェロ・グラデュメットのプラスチック格子は十分に消化されないまま便に混ざって排泄されます。
また、吸収されなかった鉄も混ざると、便が黒くなります。
フェロ・グラデュメットを内服していると、普段の便と様子が変わりますが、この点は問題ありません。
また、タンニン酸を含む飲食物と一緒に服用すると、複合体を形成してしまうとの注意喚起もなされています。
タンニン酸を含む飲食物として代表的な物が、「コーヒー」「緑茶」です。これらの飲み物とフェロ・グラデュメットを同時に内服すると、鉄の吸収率が下がると予想されます。
フェロ・グラデュメットを内服する際は、コーヒーや緑茶ではなく、水と一緒に飲み込みましょう。
フェロ・グラデュメットの副作用
フェロ・グラデュメットによる副作用で最も多く報告されているのが「消化器症状」です。主に吐き気・腹痛などが報告されています。
中でも、消化器運動が停滞している高齢の方や飲み込みに障害のある方では、口の中・食道に錠剤が留まってしまい、潰瘍に至ったとの例も報告されています。
フェロ・グラデュメットを内服する際は、十分な量の水と一緒に飲み込むようにしましょう。コップ一杯の水と一緒に内服できるのが理想的です。
主な副作用と頻度
フェロ・グラデュメット の副作用頻度は、以下の通りです。
国内文献を参考に集計された712例のうち、43例(6.0%)で副作用がみられました。
副作用と報告されていた症状別の割合を下記に示します。
- 悪心・嘔吐:2.8%
- 食欲不振:0.8%
- 腹 痛:0.7%
- 下 痢:0.5%未満
- 便 秘:0.5%未満
- 発 疹:頻度不明
- 肝機能異常:頻度不明
参考:フェロ・グラデュメット錠|インタビューフォーム
妊娠と授乳
フェロ・グラデュメット錠は、妊娠中・妊娠の可能性がある鉄欠乏性貧血にも処方される薬です。
非臨床試験(妊娠マウス・ラットを対象とした試験)では、催奇形性は認められなかったとの結果が出ています。
また、授乳中の女性に対しても鉄欠乏性貧血の治療としてフェロ・グラデュメットが処方されます。