高血圧の症状・診断・治療
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高血圧とは?
高血圧は生活習慣病のひとつで、今や国民病とも言われています。
健康診断で指摘されて心配になった、家族に言われて気になり始めたなど、高血圧を気にしている人も少なくないのではないでしょうか。
では、なぜ高血圧が問題なのでしょう?
それは、高血圧が時間をかけて動脈硬化を強めてしまう結果、脳や心臓といった重要な血管の障害を引き起こすからです。
つまり、高血圧を治療することは、重大な病気への罹患を予防することになるのです。
軽度から中度の人は症状があまり出ないので、血圧を測定する機会がないと、なかなか気づくことができません。
自覚症状が少ない段階では治療をせず、放置している人が半数以上とも言われています。
高血圧の原因
高血圧の原因は、環境・生活的要因と遺伝的な要因です。
特に生活習慣からなる要因は、原因を知ることで予防への意識が高まります。では、それぞれ見ていきましょう。
塩分の過剰摂取
塩分の1日の摂取量の目安は6gとされていますが、味噌やしょうゆなどの塩分の強い調味料を多く使った日本食を中心に食べている日本人の平均塩分摂取量は10~12gと、推奨する値よりも倍以上です。
塩分を摂りすぎてしまうと、血液中のNaを薄めようと血液量が増加することで血圧が上昇します。
また、体内の余分な塩分は腎臓から排出されますが、カリウムが不足することにより、余分な塩分がスムーズに排出できません。
果物などのカリウムを含む食材を不足しないように気を付けることで、高血圧の改善にもつながります。
肥満
肥満傾向にある方は肥満でないひとに比べ、高血圧のリスクは2倍となっています。
特に内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)では、血液量が増加し、心臓にも負担をかけてしまうので、注意が必要です。
不規則な生活習慣とストレス
多くの人が抱える精神的なストレスは、交感神経が強く働き、心臓に負担をかけるので、血液量が増加し血管を収縮させるため血圧を高めます。
生活習慣に問題がある人も、同様に注意が必要です。
- 過剰なアルコールの摂取
- 過食
- 喫煙
- 運動不足
高血圧の症状と関連する病気
高血圧は軽度〜中度では症状があまり出ませんが、急激な血圧の上昇すると、高血圧緊急症と言われる症状が出現します。
この場合はすぐに血圧を下げる必要がありますが、このように急激な高血圧による症状が認められることはそこまで多くありません。
そのため、一時的な上昇というよりは、慢性的に血圧が高いことによる大きな病気のリスクが問題となります。
高血圧緊急症の症状
- 頭痛
- 吐き気
- 動悸
- 意識障害
血圧が慢性的に高い状態である場合、常に血管に強い圧がかかっていることになるので、次第に血管は痛んでいくことになります。
その結果、「動脈硬化」「動脈瘤」「動脈解離」を引き起こしてしまうのです。
高血圧に潜む病気
慢性的な高血圧が原因となる病気で特に重大なものが、
- 心臓疾患(心不全、心筋梗塞、狭心症)
- 脳疾患(脳出血、脳梗塞)
- 腎臓病(高血圧性腎不全)
になります。
発症すると致命的な疾患や、重度の後遺症が残る疾患だからです。
慢性的な高血圧では、血管に常に高い圧がかかっていることから、血管への負担が増大します。
その負担によって、
- 動脈硬化 → 血管の狭窄・閉塞
- 血管の脆弱化 → 動脈瘤・動脈解離
などが起こります。
そして高血圧と動脈硬化は常に影響しあっていて、動脈硬化によって高血圧を増強すると同時に、高血圧がさらに動脈硬化を助長させるという悪循環が生じるのです。
高血圧治療を始めた際、動脈硬化の進行を防ぐことはできますがその治療だけで動脈硬化を改善することはできません。
つまり、高血圧を早期に治療しないと動脈硬化の進行を止めることはできないのです。
このため高血圧は、症状の自覚がなくてもコントロールしていく必要があります。
高血圧の診断基準
まず、「上の血圧」とは心臓が血液を送り出した圧のことで、「下の血圧」というのは、心臓から返ってきた血液を取り込むときの圧のことを言います。
それぞれの診断基準は以下の通りです。
- 正常値:120/80mmHg以下
- Ⅰ度高血圧:140/90mmHg以上
- Ⅱ度高血圧:160/100mmHg以上
- Ⅲ度高血圧:180/110mmHg以上
上記のⅠ度高血圧の数値に達すると高血圧の可能性があります。
ですが血圧は、1日の変動が激しく、また病院で測定すると普段より高くなったり低くなったりする「白衣高血圧」や「仮面高血圧」も多いため、1~2回の測定では実際のところはわかりません。
このため確実な診断をするには、ご家庭での血圧測定も必要です。
家庭用の血圧計には「指式」「手首式」「上腕式」とさまざまな種類がありますが、正確性を求めるなら「上腕式」がおすすめです。
血圧計の値段は3,000円ほどの安価なものから10,000円以上の高価なものが存在しますが、安いからといって正確な計測ができないわけではないので、安心してください。
購入したという方は、朝と夕方の1日2回の計測をしてみましょう。計った数値はメモを取っておくと診断や治療がスムーズになります。
高血圧の治療
血圧の重症度は、軽度(Ⅰ度)〜重度(Ⅲ度)に分類され、喫煙歴や他の生活習慣病とあわせてリスクの高さを評価した上で、治療方針を決めていきます。
低リスクと中リスクの方は生活習慣の改善で経過観察を行いますが、数か月取り組んで「上の血圧」(収縮血圧)を10〜20下げるのが目標になります。
そのためリスクに応じて、薬物治療を検討していきます。
160以上の高い数値を持続している方や、総合的な生活習慣病リスクが高い方は、早い段階で薬物治療を行い、動脈硬化の進行を防ぐ処置が必要です。
高血圧のリスク評価
まずは動脈硬化への影響という観点から下の危険因子についてリスク分析をします。
- 動脈硬化の危険因子:高齢・喫煙・糖尿病・脂質異常症・肥満・メタボ
- 臓器障害:脳・心臓・腎臓・血管・眼底
その中で、以下の因子おいては即座に高リスクとなります。
- 糖尿病
- 重いメタボリックシンドローム(糖尿病境界域+脂質異常+肥満)
- 慢性腎臓病や血液循環系の臓器障害
その他の危険因子として、
- 高齢(65歳以上)
- 喫煙
- 脂質異常
- 肥満(特に腹部肥満)
- 若年(50歳未満)発症の心臓病の家族歴
などもあります。
降圧薬の使い分けについて
降圧薬には、
- ARB、ACE阻害薬
- 抗Ca(カルシウム)拮抗薬
- 利尿薬
- α遮断薬
- β遮断薬
5種類の代表的な治療薬があります。
高血圧のガイドラインでは一般的な治療目標として140/90mmHg未満を目指し、さらに130/85mmHg未満まで目指していきます。
ですが発症している疾患によっては、もっと厳格に管理した方が良い場合や、逆にゆっくり下げた方が良い場合もがあります。
また、ただ下げれば良いというわけではなく、下がりすぎることによって
- めまい
- 気分不良
- 食欲不振
- 失神
などといった、有害事象を引き起こす可能性もあります。
降圧薬の組み合わせについて
生活習慣病ですぐの改善が難しい場合は降圧薬の治療を行いますが、1つのお薬では不十分であると判断した場合は、組み合わせて使用します。
血圧のお薬は種類が豊富で、細菌では複数の薬をまとめた合剤も多く発売されていて、服薬しやすいように工夫されています。
主に使用する降圧薬の解説
利尿剤は尿を出しやすくしますが、トイレが近くなってしまうと困ることも多いため、「ARB・ACE阻害薬」「抗Ca拮抗薬」から開始します。
血圧をあげる物質「アンジオテンシンⅡ」を阻害する薬で、血圧の負荷がかかりやすい心臓と腎臓を保護する作用があります。
ただし、ACE阻害薬には空咳の副作用があります。
その一方で、ARBは腎臓を保護する作用がありますが、重度の腎障害がある方には腎不全を進行させると言われており、採血で腎機能の確認が必要です。
ARB・ACE阻害薬よりも効果が高いとされており、血管の拡張をしつつ、臓器血流がしっかり保つことのできる薬です。
臓器障害のある高齢者にも使用しやすいといったメリットがあります。
飲み薬が苦手であったり、急激な血圧の低下が心配な方には、貼り薬もあります。
- フランドルテープ
- イソソルビドテープ
高血圧の生活習慣での改善
高血圧の治療ではいずれの重症度においても、まずは生活習慣を見直す必要があります。
高血圧を改善するためには、食習慣(塩分摂取量)の改善が重要です。
塩分は血圧を上げる最も重要な因子だからです。
- ラーメンなど麺類の汁を全部飲まない
- 漬け物やみそ汁は控える、1回量を少なくする
- むやみに調味料は使わず、味の濃いものは避ける
- 外食や加工食品を控える
など、まずはすぐにできることから始めて血圧を下げるための努力をすることが必要です。
食習慣の他にも、喫煙、飲酒、運動習慣を見直し、休養を取りストレスをためないといった他の生活習慣を見直すことも大切になってきます。
高血圧の生活習慣の改善について、ガイドラインでは以下のようなものが紹介されています。
- 減塩(6g/日未満)
- バランスのいい食事
- アルコールを控える
- 禁煙
- 食べ過ぎに注意する
- 適度な運動を心がける
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医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年11月6日
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