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原発性骨髄繊維症(PMF)の症状・診断・治療
原発性骨髄線維症とは?
原発性骨髄繊維症(以下、PMF)は、本来スポンジ状の組織である骨髄が広範囲に硬くなる(線維化)病気です。
血液は骨髄内で造血幹細胞という細胞から作り出されています。
PMFでは造血幹細胞レベルに生じた遺伝子異常により、巨核球(血小板になる前段階の細胞)と、顆粒球(白血球の一種)系細胞が異常に増殖し、これらの細胞が産生する物質(サイトカイン)によって骨髄の線維化が起こると言われています。
症状と特徴
線維化した骨髄内では新たな血液が造り出せなくなることから、脾臓や肝臓といった骨髄外で造血する「髄外造血」がすすみ、骨髄のように未熟な細胞をとどめておけないため、末梢に幼若細胞がこぼれ出てしまいます。
このため、有効な血液が作り出せない無効造血、末梢血で涙滴状赤血球という特異な形状の赤血球の出現、未熟な血球細胞の出現といったことが起きる特徴があります。
PMFの約半数の症例で、JAK2遺伝子の変異が見られます。
40代から次第に増加し60-70代がピークになり、男女比は 2:1 と男性に多い疾患となります。
原発性骨髄繊維症(PMF)の症状と予後
骨髄線維症では、以下の3つの症状が出現します。
- 造血細胞の減少による貧血症状
- 髄外造血による腹部症状
- 異常増殖した巨核球と顆粒球から産生されるサイトカインによる全身症状
具体的には、
- 貧血症状:未熟・奇形な赤血球が増えることから、動悸、息切れ、倦怠感など
- 腹部症状:新たな造血の場となった脾臓や肝臓が腫大することによる、腹部膨満感や腹痛など
- 全身症状:サイトカインによって全身が炎症状態になることによる、発汗・発熱、体重減少など
原発性骨髄線維症の予後とは?
骨髄線維症の臨床経過や予後は均一ではなく、患者間によるバラツキが大きくあります。
生存中央期間は3~4年で、主な死因は感染症、急性白血病への移行、原疾患の悪化になります。
原発性骨髄線維症の診断と分類
診断はWHO分類の診断基準に基づいて行われます。
診断には下記の検査を行い、総合的に判断されます。
- 貧血、腹部症状(髄外造血による巨大脾腫:巨脾)
- 血液データ(正球性貧血、白血球数増加、涙滴赤血球や赤芽球の血液像、NAP上昇など)
- 骨髄検査(骨髄穿刺で髄液が採取できないdry tap、骨髄の線維化など)
- 遺伝子検査(JAK2遺伝子変異、フィラデルフィア遺伝子変異がない)
これらの検査を行い、他の骨髄系腫瘍や2次性骨髄繊維症が除外されると、骨髄線維症と診断されます。
原発性骨髄線維症の分類
骨髄線維症の予後分類では、3種類の国際的予後分類が使用されています。
どの分類においても方法は同じで、表1で予後因子の点数を合計し、表2によってリスクが決められます。
原発性骨髄線維症の分類
表1:予後因子の点数化
表2:リスク分類
※DISPP-Plusは中間-1リスクを1点、中間-2リスクを2点、高リスクを3点とし、これに上記の血小板数、赤血球輸血依存、予後不良染色体の点数を加えてスコア合計を算出する。
原発性骨髄線維症の治療法
PMFの治療に際しては,リスク評価に基づき治療方針を立てることが基本となり、図1に大まかな治療アルゴリズムを示します。
骨髄線維症の治療は、
- 症状緩和:支持療法、薬物療法
- 根治療法:造血幹細胞移植
の大きく2つに分けられます。
支持療法とは?
輸血や薬剤を用いて、貧血や出血傾向の改善、感染症の予防や治療、輸血によって体内で増加した鉄の除去などが行われます。
薬物療法とは?
薬剤を用いて症状の緩和や進行を抑える治療になります。
薬物療法に用いられる薬剤には大きく3つあります。
- 酢酸メテノロン(商品名:プリモボラン)
- ヒドロキシウレア(商品名:ハイドレア)
- ルキソリチブ(商品名:ジャカビ)
それぞれの特徴を説明します。
酢酸メテノロン(商品名:プリモボラン)
- 貧血に対する治療
- 赤血球を増やすホルモンを出させるとともに、造血を促す
- 不可逆的な男性化の副作用がある
ヒドロキシウレア(商品名:ハイドレア)
- 抗がん剤
- 中間-1リスク群や低リスク群で脾腫に対する治療として用いられる
- 副作用に骨髄抑制がある
ルキソリチブ(商品名:ジャカビ)
- 過剰な細胞増殖を抑制する分子標的薬の一種でJAK2阻害剤
- 中間-2リスク・高リスク群における脾腫に対する治療の第一選択薬
- 全身状態の改善や、脾腫の縮小(赤血球増殖の抑制、骨髄繊維化の抑制)に効果があるとされている
造血幹細胞移植とは?
自身の造血幹細胞とドナーの造血幹細胞を総入れ替えする治療法。新たな造血幹細胞によって造血機能の正常化を図ります。
原発性骨髄線維症の重症度別の治療方針
上述した重症度によって、治療方針が異なってきます。ここでは重症度別にご紹介していきます。
低リスク、中間-1リスク群の治療方針
生命予後は比較的良好で無症状の場合は生存期間が10年を超えるため、現時点では経過観察が望ましいとされています。
症状を有する場合には、支持療法や薬物療法を行います。
中間-2リスク、高リスク群の治療方針
造血幹細胞移植不適応の場合は、支持療法とルキソリチブ(商品名:ジャガビ)を用いた薬物療法が行われます。
現時点での治癒が期待できる治療法は造血幹細胞移植であり、可能であれば移植が推奨されます。
しかし患者は高齢であることが多く、治療関連死亡率の高さや、個々の患者において移植関連死亡、長期予後などを考慮し、治療方針を決定する必要があります。
若年者の場合では、造血幹細胞移植が積極的に考慮されます。
原発性骨髄線維症の専門治療のご紹介
血液内科は専門性が非常に高く、治療が行えるクリニックは非常に限られています。
このため大きな病院に患者さんが集まっており、平日に通院し長時間待っての診察となっているのが現状です。
当院では周辺の大学病院や総合病院の血液内科専門医と協力し、専門的な治療と社会生活を両立できることをコンセプトに立ち上げました。
上野院だけでなく、神奈川の武蔵小杉院・元住吉院にて、血液内科専門医による外来を行っております。
- 大学病院:日本医科大学・順天堂大学・東京大学・慈恵会医科大学・昭和大学
- 総合病院:永寿総合病院・三井記念病院・NTT東日本関東病院・関東労災病院
お近くで原発性骨髄線維症でお悩みの方は、どうぞご相談ください。
また当法人への通院が困難な方につきましては、イシュランをご参照ください。
こちらでは、科学的根拠にもとづいた骨髄増殖性腫瘍(MPN)治療をおこなっている全国の病院や医師をご紹介しています。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
上野御徒町こころみクリニックでは、血液患者さんの治療と社会生活の両立を目指し、大学病院と夜間連携診療を行っています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
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カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年10月15日
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