エムプリシティ(一般名:エロツズマブ)の効果と副作用

エムプリシティ(一般名:エロツズマブ)は、多発性骨髄腫(multiple myeloma:MMに使われる抗体薬です。

「抗ヒトSLAMF7抗体」として、骨髄腫細胞やNK細胞に作用し、腫瘍細胞の増殖を抑制する方向に働きます。

今回は、エムプリシティの効果や副作用について解説します。

エムプリシティとは?

エムプリシティ(一般名:エロツズマブ)は、多発性骨髄腫の治療に使われる注射薬です。

「抗ヒトSLAMF7抗体」と呼ばれ、骨髄腫細胞膜上のSLAMF7・NK細胞のSLAMF7に結合し、免疫機能を高める方法で効果を発揮します。

エムプリシティは、多発性骨髄腫に使われる抗体薬として初めて承認された薬剤で、SLAMF7に結合できる唯一の治療薬になります。

エムプリシティは注射薬であり、医療機関で点滴静注の方法を用いて投与されます。

エムプリシティの適応

エムプリシティ(一般名:エロツズマブ)の適応として、以下が認められています。

  • 再発又は難治性の多発性骨髄腫

エムプリシティの効果

エムプリシティは抗ヒトSLAMF7抗体であり、免疫システムの活性化を担う薬剤です。

SLAMF7は、NK細胞・骨髄腫細胞に発現しているタンパク質にあたります。エムプリシティは、NK細胞・骨髄腫細胞の表面にあるSLAMF7に結合して薬理作用を示します。

NK細胞(ナチュラル・キラー細胞)は、体内の腫瘍細胞を見つけ、攻撃をするリンパ球です。

NK細胞のSLAMF7にエムプリシティが結合すると、NK細胞が活性化され、骨髄腫細胞へ攻撃する機能が高まります。

さらに骨髄腫細胞のSLAMF7にもエムプリシティが結合すると、NK細胞にとっての目印となり、骨髄腫細胞への攻撃を容易にします。

この作用により、エムプリシティの投与によって体内の腫瘍細胞を攻撃する免疫機能が高まります。

エムプリシティの用法

エムプリシティ(一般名:エロツズマブ)の用法は、以下の通りです。

エムプリシティは「点滴静注」で投与を行う。投与スケジュール・投与量は、併用薬によって以下のように変動する。

レナリドミド・デキサメタゾン併用の場合

【投与スケジュール】
  • 1サイクル=28日間
  • 最初の2サイクルは、1週間間隔で4回投与(1、8、15、22日目)
  • 3サイクル以降は、2週間間隔で2回投与(1,15日目)
【投与量】
  • 1回10mg/kg

ポマリドミド・デキサメタゾン併用の場合

【投与スケジュール】
  • 1サイクル=28日間
  • 最初の2サイクルは、1週間間隔で4回投与(1、8、15、22日目)
  • 3サイクル以降は、4週間間隔で1回投与(1日目)
【投与量】
  • 最初の2サイクルは、1回10mg/kg
  • 3サイクル以降は、1回20mg/kg

また、エムプリシティは「どれくらいの速さで点滴をするか」が厳密に決まっています。

エムプリシティ投与中に起きやすい「インフュージョンリアクション」を予防するためです。

そのため、初めて投与する際は特に時間をかけ、様子を見ながら投与していきます。

エムプリシティの投与回数を重ねていく中で、特に問題が見られなければ速度を上げて投与していきます。

エムプリシティの副作用

エムプリシティの副作用で、特に注意すべきなのが「インフュージョンリアクション」「好中球減少」です。

インフュージョンリアクション」は、薬剤の注入により起こりうる反応で下記のような症状が見られます。

  • 蕁麻疹
  • 皮膚のかゆみ
  • 悪寒・ふるえ
  • 発熱
  • 高血圧・低血圧
  • 呼吸困難 など

インフュージョンリアクションは、エムプリシティ投与中~投与後24時間以内に起こりやすい症状です。

インフュージョンリアクション予防のため、エムプリシティは投与する速さが厳密に決められており、特に初めての場合は長い時間をかけて投与をします。

予防的措置はなされていますが、もし気になる症状が現れたら、投与中・投与後にかかわらず早めに医療機関スタッフに相談をしましょう。

好中球減少は、血液中の好中球の数が減り、感染症などにかかりやすくなる状態です。好中球は体内に細菌・ウイルスが侵入した際に、戦う役割を持ちます。

そのため、好中球の数が減ってしまうと、細菌やウイルスに対して抵抗できなくなってしまい、発熱・かぜ症状などが起きやすくなります。

エムプリシティの投与をしている間は、手洗い・うがいなどをしっかりと行い、感染症予防に努めましょう。

主な副作用と頻度

エムプリシティの副作用頻度は、以下の通りです。

  • 疲 労:28.9%(92/318例)
  • 末梢性浮腫:14.5%(46/318例)
  • 発 熱:12.6%(40/318例)
  • 無力症:11.6%(37/318例)
  • 好中球減少症:27.0%(86/318例)
  • 血小板減少症:17.6%(56/318例)
  • 貧 血:15.1%(48/318例)
  • 下 痢:18.6%(59/318例)
  • 便 秘:14.5%(46/318例)
  • 悪 心:12.3%(39/318例)
  • 高血糖:13.8%(44/318例)
  • 筋痙縮:16.4%(52/318例)
  • 発 疹:7.5%(24/318例)
  • 不眠症:16.0%(51/318例)

参考: 国際共同第3相試験(CA204004試験)

妊娠

エムプリシティについて、妊娠中・妊娠の可能性がある女性に対しては投与が禁止されています。

これは、エムプリシティによる胎児への影響を確かめる試験が行われておらず、胎児リスクが不明とされているためです。

また、抗体製剤であるエムプリシティは、IgG抗体に分類されます。

IgG抗体は、人間の胎盤を通過することが知られています。そのため、エムプリシティも胎盤を通過し、胎児暴露してしまう可能性が否めません。

男性に対しても、エムプリシティの受胎能への影響が明らかになっていないため、避妊期間を設けるよう定められています。

授乳

エムプリシティ投与中は、「治療の有益性も考慮し、授乳を継続するか、中止するかを検討すること」とされています。

これは、「エムプリシティが母乳中へ移行するのか」といった試験が十分に行われていないためです。

しかし、エムプリシティの抗体分類にあたるIgG抗体は、母乳中に移行することが知られています。

エムプリシティも母乳に移行する可能性があるとされているため、投与中は授乳中止の検討が望ましいでしょう。

エムプリシティの薬価

エムプリシティの薬価は以下の通りです。※2023年5月現在

  • 先発品(エムプリシティ点滴静注用):300㎎・162,608円、400㎎・212,305円
  • 後発品:未発売

まとめ

  • エムプリシティは、再発・難治性の多発性骨髄腫に使われる抗体薬です。
  • 「抗ヒトSLAMF7抗体」として、骨髄腫細胞の増殖を抑える方向に作用します。
  • エムプリシティの副作用で特に注意すべきものが「インフュージョンリアクション」「好中球減少」です。
  • エムプリシティによるインフュージョンリアクションを防ぐために、時間をかけて投与します。
  • エムプリシティの薬価は、300㎎が162,608円、400㎎が212,305円です。

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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年6月21日

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